児童福祉法とは?主な構成や改正のポイントをわかりやすく解説

子どもの福祉を支援するための基盤となる法律「児童福祉法」。子どもに関わる仕事をしているすべての人が理解しておかなければならない法律です。この記事では、そんな児童福祉法の主な構成や、最新の改正ポイントをわかりやすく解説します。
児童福祉法とは?
児童福祉法とは、子ども達が良好な環境のなかで生まれ、心身ともに健やかに育成されることを支援するための法律です。保育や母子保護、児童虐待など、さまざまな観点から福祉を支えています。そのなかでも重要なのが、昭和22年の制定当初から改正されていない児童福祉法第1条から第3条です。
第1条(理念)
第1条では、以下のような児童福祉の理念について定められています。
すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。 2すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
第2条(責任)
第2条では、以下のような児童育成の責任について定められています。
国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
第3条(尊重)
第3条では、以下のような原理の尊重について定められています。
前2条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。
児童福祉法の主な構成
児童福祉法は、改正をくり返しながらその対策を強化していきました。2024年現在の児童福祉法は第1章から第8章まであり、それぞれ以下のように構成されています。
総則
第1章の「総則」では、児童福祉法の定義や実施機関について記載されています。また、児童福祉法に定められている児童福祉司や児童委員、保育士の責務や資格要件を定めています。
・国及び地方公共団体の責務
・定義
・児童福祉審議会等
・実施機関
・児童福祉司
・児童委員
・保育士
福祉の保障
第2章の「福祉の保障」では、特定疾病の医療費についてや療育指導、障害児の居宅生活の支援などについて定められています。
・療育の指導、小児慢性特定疾病医療費の支給等
・居宅生活の支援
・助産施設、母子生活支援施設及び保育所への入所等
・障害児入所給付費、高額障害児入所給付費及び特定入所障害児食費等給付費並びに障害児入所医療費の支給
・障害児相談支援給付費及び特例障害児相談支援給付費の支給
・要保護児童の保護措置等
・被措置児童等虐待の防止等
・情報公表対象支援の利用に資する情報の報告及び公表
・障害児福祉計画
・雑則
事業、養育里親及び養子縁組里親並びに施設
第3章で定められているのは「事業、養育里親及び養子縁組里親並びに施設」についてです。児童自立支援事業などに関して、都道府県ができることや、放課後児童健全育成事業について市町村がおこなうべきことなどが記されています。また、以下のような児童福祉施設の目的についても明記されています。
助産施設
乳児院
母子生活支援施設
保育所
幼保連携型認定こども園
児童厚生施設
児童養護施設
障害児入所施設
児童発達支援センター
児童心理治療施設
児童自立支援施設
児童家庭支援センター
費用
第4章では、さまざまな「費用」について記載されています。主に明記されているのが、都道府県が支弁する費用、市町村が支弁する費用です。
国民健康保険団体連合会の児童福祉法関係業務
国民健康保険団体連合会とは、国民健康保険法第83条に基づき、会員である保険者が共同してその目的を達成するために設立された団体のことです。第5章には、そのなかでも「児童福祉法関係の業務」について定められています。
審査請求
第6章には、障害児の通所など給付費に関する処分に対して不服がある場合の「審査請求」について定められています。
雑則
第7章の「雑則」では、前章までの内容について、さらに深掘りした規則について明記されています。
罰則
第8章の「罰則」には、児童福祉法で禁止または制限されている行為をおこなった場合に課せられる処罰について記載されています。
児童福祉法改正のポイント
児童福祉法は幾度となく改正され、子どもを取り巻く環境に対応してきました。近年では2022年6月に改正がおこなわれ、2024年4月より施行されます。改正ポイントは、以下のとおりです。
子育て世帯に対する支援
1つ目は「子育て世帯への包括的支援に向けた体制の強化と事業の拡充」です。これまで、子育て世代が悩みを抱えたとき、相談場所として機能していたのが子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターでした。しかし、それぞれの連携不足が課題となっていました。そこで、それぞれの機能を一体化させた「こども家庭センター」を新たに設置し、体制の強化と事業の拡充を図ります。
一時保護所などの児童への支援
2つ目は「一時保護所及び児童相談所による児童への処遇や支援、困難を抱える妊産婦等への支援の質の向上」です。なんらかの事情により保護者の養育が不適切である子ども、または出産にあたり養育の支援が必要とされている妊婦に対し、支援の拡充が求められています。そこで、一時保護所の設備・運営基準を策定して一時保護所のより良い環境改善を図ります。
障害児など自立支援の強化
3つ目は「社会的養育経験者・障害児入所施設の入所児童等に対する自立支援の強化」です。障害児入所施設に入所する子どもは、原則として18歳を迎えると自立を促されます。しかし、個々の状態によっては自立が困難なケースも少なくありません。そこで、児童自立生活援助の年齢による一律の利用制限を弾力化できるように改正されます。
子どもの意見聴取に関する整備
4つ目は「児童の意見聴取等の仕組みの整備」についてです。なんらかの事情により保護者と暮らすことが困難で、児童相談所などに入所措置される子どもが後を絶ちません。そのような状況でも、子どもの最善の利益が考慮されることが求められます。そこで、児童の意見や意向を考え合わせられるよう、意見聴取などの整備がおこなわれるようになります。
一時保護判断への司法審査導入
5つ目は「一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入」です。子どもが虐待されている可能性がある場合、原則として48時間以内に安否確認をおこなう必要があります。そして、子どもが置かれている環境が不適切だと判断した場合、児童相談所にて一時保護の措置を取ります。その際、保護の適正さを確認するために司法審査が導入されることになります。
子ども家庭福祉の専門性向上
6つ目は「子ども家庭福祉の実務者の専門性の向上」です。児童虐待を受けた子どもの保護にあたる専門家について、十分な知識や技術を持っている人として新たに児童福祉司の任用要件に追加されます。
わいせつ行為から守る環境整備
子どもをわいせつ行為から守るため、そのような行為をおこなった保育士の資格管理やベビーシッターなどに対する事業停止命令などが可能となります。また、児童福祉施設を運営するにあたり、児童の安全の確保が徹底されるよう所要の改正がおこなわれることになりました。
まとめ
児童福祉法は、子どもが心身ともに健康に過ごすために欠かせない法律です。子どもと関わる仕事をするなかで、知っておくべき条例がたくさんあります。そして、今後も子どもを取り巻く環境に合わせて改正が重ねられることが考えられます。都度、必要な項目を把握できるようにしたいですね。




