休日も仕事のミスでモヤモヤ……しっかり休めない保育士さんは「心を観る瞑想」で心のトレーニングを

今回は、精神科医・産業医としてご活躍されている、奥田弘美先生に、休日に心と体をリフレッシュさせて、より有意義な時間に変えるためのコツを教えていただきました!
心がスッと軽くなる! 保育士さんのためのマインドフルネス講座
- *シリーズ「保育士さんのための保健室・メンタル編」は、医療関係者などの専門家への取材を通じて、保育士さんの心健康維持・向上に役立つ情報を発信していく連載企画です。
休日は心身の「休息」と「リフレッシュ」のための時間
でも、休日は心と体に休息を与え、リフレッシュさせてあげるための大切な時間。今回は、どうしたら休日をより充実した時間に変えられるか、いっしょに考えていきましょうね!
休日の「ストレス思考」は体の不調にもつながる
たとえば、「今仕事において、夢中で取り組んでいることがあって、楽しくてたまらない。だから休日もそのために勉強をしたい!」といった思考の場合、睡眠と食事をきちんと摂って体を休めることに気を付ければ、あえて頭のなかから仕事のことを排除する必要はないでしょう。
いっぽう、ネガティブな思考や考え、つまり「ストレス思考・感情」が原因になっている場合や、自分が「オフ」の状態になりたいと思っているにもかかわらず、「オン」の状態を引きずってしまっている場合には、注意が必要です。
たとえば、「先週の仕事での嫌なできごとを、どうしても思い出してしまう」というような場合には、せっかくの休日も楽しめませんよね。
休日とは「心と体の休息」と、次の一週間を元気に過ごすための「リフレッシュ」という2つの重要な役割を担っています。
イライラや怒り、不安、後悔……そういった「ストレス思考・感情」にとらわれ続けていると、気づかないうちに、心や体からエネルギーが吸い取られていってしまいますので、心身の重大なトラブルにもつながりかねません。
心身をゆったり休めるためのトレーニング「心を観る瞑想」
そのために今回ご紹介するのが、心のトレーニング法のひとつである、「心を観る瞑想(ヴィパッサナー瞑想)」( ※以下「心を観る瞑想」と表記します)です。
「心を観る瞑想」は、前回の記事でご紹介した、マインドフルネス瞑想のうちのひとつ。呼吸を意識のベースにしながら、次々とわいてくる思考に気づき、観ていく瞑想法です。
「心を観る瞑想(ヴィパッサナー瞑想)」をやってみよう!
【1】胡坐(あぐら)をかくか、イスに座りましょう
【ポイント】 |
胡坐をかくのは、骨盤から背筋をスッと伸ばす姿勢を作りやすくするためと、床に長時間座っても足がしびれないようにするため。 |
【ポイント】 |
手の重ね方・置き方に、とくに決まりはありません。 |
【2】背筋を伸ばしましょう
【ポイント】 |
姿勢を崩したままだと、ネガティブな思考にとらわれやすくなってしまうだけでなく、刺激が少ないため、眠気を引きおこす原因にもなります。 |
【3】目を閉じ、鼻先の空気の流れを意識しながら呼吸を繰り返します
鼻先の空気の流れに意識を集中しながら、呼吸を何度も繰り返していきます。
【4】思考や感情が生まれたらそのことに「気づき」、呼吸に意識を戻します
そのときは、「〇〇のことを考えていた」「××を思い出していた」というように、その思考についてしっかりと気づいてください。そして、気づいたあとにはまた、静かに鼻先の空気の流れへと、意識を戻していきます。
【ポイント】 |
この瞑想の目的は心を「無」にすることではありません。思考や感情が浮かぶのはあたりまえ。呼吸から意識が離れても「集中力がないな……」などと自分を責めたりしないようにしましょう! |
【4】ある程度繰り返したら「目を開けます」と心の中で言って目を開けます
【ポイント】 |
瞑想を続けるなかで「つらい」と感じたときには、瞑想を終了するようにします。無理をしない範囲で取り組むことが大切です。 |
「心を観る瞑想」で期待できる効果とは?
自分がとらわれている思考や感情などが見えてくる
その思考に気づいて、ふたたび意識を鼻先の呼吸に戻すことを繰り返すことで、
思考に囚われずに流しやすくなっていきます。またそれを繰り返している中で自分が気になっていることや、自身の思考の根底にあるものに気づくこともあります。
自分が「思考や感情にとらわれている状態」に気づきやすくなる
思考が連鎖したり増幅したりする状況が見えてくる
瞑想を続けて心をトレーニングすることで、このような思考の連鎖があることに気づき、自分自身でネガティブ思考を膨らませてしまうことを防ぐことができるようになっていきます。
「気づく」ことが「今、ここ」の瞬間を大切に生きるための第一歩
過ぎ去った過去に対する後悔や怒り、まだ起こっていない未来に対する不安というような、ストレス思考・感情に気づくことでネガティブ思考と距離をとることができます。そしてさらに瞑想を活用することで、少しずつそれらを手放すことができるようになっていきます。
すぐに完ぺきにネガティブ思考を手放すことは難しいと思いますが、これらを繰り返すことによって「今、ここ」の瞬間を大切にしながら、より有意義な時間を過ごせるようになるでしょう。
瞑想をするときには、こんなことに注意しましょう!
◆自分に強要しないこと |
まずは数分~30分程度を目安に、瞑想に取り組むことをおすすめしますが、「〇分間続けなくては」と自分に強要しないようにしましょう。 |
◆短時間でも繰り返し瞑想を続けること |
マインドフルネス瞑想は、「心のトレーニング法」。一度の瞑想でも心の休憩にはなりますが、前述してきたような効果を得るためには続けることが必要です。短時間でもよいので、休日など時間の余裕があるときに、繰り返し実践することをおすすめします。 |
◆予定を控えているときには…… |
瞑想をしていると心地よく、その後の予定を忘れて没頭してしまうこともあります。もしもやるべきことが後に控えている場合には、タイマーなどを活用してみるとよいでしょう。 |
うまく思考・感情を手放すコツは「エネルギーの無駄遣い」を自覚すること
そんなときに重要なのは、過去のできごとへのクヨクヨした執着と、まだ見ぬ未来への漠然とした不安は、あなたの貴重な時間と労力の「ムダ使い」だということを、頭に置いておくことです。
もちろん過去に対する「適切な反省」や、未来に対する「必要な準備」をすることはよいのです。しかし仕事で過去に失敗したことをいくら悔んでも、失敗はなかったことにはなりません。また、「明日の行事、うまく進行できなかったらどうしよう……」と不安がったところで、未来のことはどうなるかわかりませんよね。 「今やるべきことに集中せず、過去や未来にばかり引きずられているというのは、エネルギーの無駄遣いである」 このことをしっかり認識していると、自分がどうすることもできないことに心をとらわれていることに気づいたとき、思考・感情を手放しやすくなっていきます。
こんなときはどうする?お悩み相談室
【お悩み1】周囲の音がとても気になってしまいます……
瞑想をしていると、時計の秒針の音や、外で近所の人がしゃべっている声など、普段気づかない音にも気づくようになるでしょう。
音に気づいたら、「あ、〇〇の音に気づいたな」と意識して、また鼻先の呼吸に意識を戻すようにしましょう。
【お悩み2】なかなか一人になる時間がなくて……
そんなときには一人になれる入浴の時間に、瞑想をしてみるのもおすすめです。
「心を観る瞑想」は、かならずしも座禅を組む必要はありません。イスなどに背筋を伸ばして座り、目を閉じることができれば屋外でも実践することができます。
【お悩み3】週に1回でも効果はありますか?
【より深く理解するために】マインドフルネス瞑想のルーツと「無常」の概念
ブッダの教えと聞くと「宗教」のイメージを抱く方が多いかもしれませんが、本来ブッダの教えはいわゆる宗教ではなく、人生の苦しみを滅するための理論と、それを身につけるための心のトレーニング方法でした。
マインドフルネス瞑想をよりよく知り、「今、ここ」の瞬間を大切に生きようとする生き方ができるよう、最後にその教えを少しだけご紹介しましょう。
「執着」と「無常」の概念
「執着」を強く持てば持つほど、「常に人から認められていたい」「失敗したくない」「ずっと若く美しくいたい」というような欲望が生まれ、自分自身を苦しめてしまうことにつながっていきます。
ブッダは「この世のすべては無常である」と説きました。無常とは、すべての物・人・状態は、常に変化して、同じ状態で留まっていることはできない、ということです。
私たちの大切にしている物も、人も、周囲からの評価も、自分の体や心、そして自身が置かれた状況も、かならず変化していきます。よいこと・楽しいことも永遠に続くわけではなく、逆に悪いこともまた、いつまでも続くわけではありません。
なにかに強く執着して「無常」と逆行するような欲望を持てば、それが苦しみにつながっていく。そして今苦しい状況でも、「今、ここ」に目を向け、前向きに過ごしていれば、いずれ状況は変化する。ブッダが説いたのは、そんな心理学・哲学的な内容だったのです。
マインドフルネス瞑想=「無常」の実体験
これは、まさにブッダの説いた「無常」を実体験していることになります。 意識や感情は常に変化していき、心がひとところにとどまることはない。それを、瞑想を通じて実際に体験することで、なにかに執着し、心がとらわれてしまっている自分自身の状態に気づきやすくなり、それらの思考や感情を手放して「今、ここ」に意識を戻すことができるようになっていくのです。
編集者より
もしも休日に心が休まらない、前向きな気持ちになれない……という場合には、ぜひ今回ご紹介いただいた瞑想法を活用し、「今、ここ」の瞬間を大切にできるマインドフルネスな時間を取り戻してくださいね!
この記事が一人でも多くの保育士さんの、充実した休日の時間の創出につながること、そして、一人でも多くの保育士さんが、笑顔で休日を過ごすことができることを心から願っています。
次回は月曜の朝が憂鬱な「ブルーマンデー」の対処法について、引き続き奥田先生にお話をうかがいます。どうぞお楽しみに!
◆奥田弘美先生について◆
作家、日本マインドフルネス普及協会代表理事
平成4年山口大学医学部卒。
精神科医・産業医として都内20か所の企業で産業医として
働く人の心身のストレスケアに携わるほか、
日本マインドフルネス普及協会を仲間とともに設立し、マインドフルネスの普及活動も行っている。
著書にはベストセラーとなった「心の折り合いをつけて、うまいことやる習慣」(すばる舎)
「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)のほか、
「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)
「図解・めんどくさいをスッキリ消す技術」(マキノ出版)、など多数。
- ※本連載でご紹介しているマインドフルネス瞑想は、「悟り」を目的とした瞑想修行や、病的症状の治療を目的とする集中プログラムではありません。
※心身の病気などで医療機関にかかっている場合などには、主治医に相談し、許可をうけたうえでマインドフルネス瞑想を取り入れることをおすすめします。











