処遇改善で保育士さんの給与アップ!

保育士さんのための『処遇改善制度』について
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現在、保育業界では「給与が低い」という理由が、離職理由の6割を占めています。厚生労働省の調査によると、保育士さんの平均給与は、月収約24.6万円、年間賞与も含めると年収にして約370万円程(※)。このデータからみても決して金額が低すぎるというわけではありませんが、“命を預かるという責任の重さ”と“仕事量の多さ”を考慮すると果たして適正な金額と言えるのでしょうか。また、保育士という仕事はほかの職種と比べて職制階層が少なく、従来は園長、主任保育士、保育士…といった枠組しかなかったため、いくら経験を積んでいても昇給が見込めないことが問題でした。
しかし近年、保育士さんの“給与の引き上げ ”と“キャリアアップ ”を図るため内閣府は新たに「保育士処遇改善等加算」制度を設けたのです。それにともない、「処遇改善手当」として保育士さんに手当が支給されるようになりました。
この手当でどれくらいお給料が上がるのでしょう?手当を貰える条件はあるのでしょうか?今回は「保育士処遇改善等加算」についてわかりやすく説明していきます。
(※参考:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』)

保育士処遇改善等加算ってなに?

「保育士処遇改善等加算」とは、保育士さんの離職理由の中でもっとも多い“給与面”の不満を解消(改善)するための制度です。国から補助金として園に支給され、職員の離職率を下げて待機児童を減らすことが目的です。平成25年度(2013年)に「処遇改善等加算Ⅰ」が設けられ、給与の約3%(月額約9,000円)の支給から始まり、5年後の平成30年度(2018年)には約3%から約11%(月額約35,000円)と年々保育士さんへの手当の支給額は上がっています。
またさらに、処遇改善加算Ⅰとは別に平成29年度(2017年)には新たに保育士のキャリアアップを目的とした「保育士処遇改善等加算Ⅱ」を設立。職制階層の中に新たに役職を設定し、その職務や職責に応じた処遇改善を行うことで保育士さんのキャリアアップを支援するものです。
最初にご説明したように、今まで保育職の職制階層は、園長、主任保育士、保育士と主に3つの階級で構成されていたため、限られた保育士しか役職につくことができませんでした。実際に公立の保育園では、主任保育士に就いた方の平均勤続年数は20年以上の方が多く、それだけキャリアを積まないと役職を得ることは難しいということがわかりますよね。そこで国の政策として「保育士処遇改善等加算Ⅱ」を新たに設けることにより、保育士と主任保育士のあいだに「副主任保育士」「専門リーダー」「職分野別リーダー」という3つの役職を増やしました。これにより、保育士の経験・スキルに応じて役職を与え、それぞれに処遇改善手当を支給します。職務分野別リーダーであれば、月額5,000円。副主任保育士や専門リーダーとなると、なんと月額最大4万円も支給されるのです!
月のお給料に、処遇改善加算Ⅰ(約11%)と処遇改善加算Ⅱ(最大4万円)が加わるだけで保育士さんの懐事情も大きく変わってきますよね。
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おさらい!
処遇改善等加算には、ⅠとⅡの2種類があります。
Ⅰは「ベースとなる保育士さんの給与の底上げ」、Ⅱでは「階級を増やすことで保育士さんの経験・技術を考慮したキャリアアップのための支援」を目的としています。

新しい「経済政策」でさらに保育士の給料がアップ!

令和元年(2019年)の10月から消費税が10%に引き上げられたこともあり、その増えた収入分を財源として国は新たに約2兆円規模の「経済政策」を行うことを発表しました。この取り組みにより、保育業界にもさまざまな支援が行われ、同じ年の4月には保育士さんの処遇改善手当の支給額がさらに1%(月額約3,000円相当)引き上げられることとなりました。それだけ待機児童が深刻な問題だということ、そのためにも早急に保育士の離職率を下げるべく処遇改善を行うことを国は最優先事項としているのです。

処遇改善手当に期間はあるの?

処遇改善手当が受けられる期間ですが、今現在も明確に定められてはおりません。その理由は、「待機児童の問題」がまだ解消されていないからです。この問題を解決するために必要なのは「保育士(職員)の確保」です。保育士を増やし職員数を維持するためにも、今後も支給され続けるのではと予想されています。

では、次に新たに増えた役職がどういったものなのかについてご説明していきます。

新しい役職の仕事内容と条件

「保育士処遇改善等加算Ⅱ」によって、新たに増えた3つの役職。まずは、それぞれの主な仕事内容と役職を得るために必要な条件について簡単にまとめてみました。
■副主任保育士
【仕事内容】
保育士の管理をする主任保育士とは異なり、管理職全般の業務を担当します。
主任保育士の下に位置し、専門リーダーと同等です。
【条件】
・経験年数 7年以上
・職務別分野リーダーの経験がある
・マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了している
・園長、主任保育士を除く保育士全体の1/3の人数が上限
■専門リーダー
【仕事内容】
専門性の高いリーダーとして、職場のスタッフをサポートします。
主任保育士の下に位置し、副主任保育士と同等です。
【条件】
・経験年数 7年以上
・職務別分野リーダーの経験がある
・4つ以上の分野の研修を修了している
・園長、主任保育士を除く保育士全体の1/3の人数が上限

■職務分野別リーダー
【仕事内容】
各分野において専門的知識を高めたリーダーです。
例えば、乳児保育分野リーダーは、担当する職員に乳児の保育指導を行うほか、乳児を育てる保護者に対して寄り添ったアドバイスを提供します。
副主任保育士と専門リーダーの下に位置します。 
【条件】
・経験年数 3年以上
・担当する職務分野の研修を修了している
・園長、主任保育士を除く保育士全体の1/5の人数が上限

副主任保育士と専門リーダーはどちらも7年以上の経験を有し、処遇改善額も月額4万円と経験に応じて高く設定されています。2つの役職で違う点は、副主任保育士は研修の「マネジメント」という分野を必ず受講しなければならないということです。どちらも職制階層としては、主任保育士の次に位置される役職となりますね。
一方で、職務分野別リーダーは必要経験年数は3年以上、担当する職務分野の研修を修了することで与えられる役職です。その分、支給される処遇改善額は月額5,000円と低めに設定されていますが、必要経験年数が低く、保育士歴の浅い保育士さんにとって比較的手に届きやすく感じますよね。若手のうちから経験や知識を高めることで、早期キャリアアップを目指せる役職です。
(参考:厚生労働省『保育士等の処遇改善等について』)
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園によっては、教務主任、学年主任と役職の名称が異なる場合があります。しかし、たとえ呼び方が違っていても、それに相当する役職が設定されているのであれば、処遇改善手当の対象となります。

キャリアアップ研修ってどんなもの?

3つの役職を得るために必ず条件に含まれている『研修』という項目。
それはいったいどういった内容なのでしょうか。

■キャリアップ研修とは?
保育士さんのスキルアップを目的に、厚生労働省が処遇改善とともに創設した「キャリアアップ制度」です。子どもたちの発達や食育、保護者への子育て支援など、幅広い分野の研修を受けることができ、より専門性を向上させて“保育の質”を高めることにも繋がります。

キャリアップ研修の分野はおもに8つに分類されています。
①乳児保育
②幼児教育
③障害児保育
④食育、アレルギー対応
⑤保健衛生・安全対策
⑥保護者支援・子育て支援
⑦マネジメント
⑧保育実践
各分野の内容は5つの項目に分けられています。1つの分野を修了するためには、該当する分野の5つの項目すべてを受講しなければなりません。時間にしておよそ、15時間以上(約2~3日程)必要となります。

例えば、
・副主任保育士は「⑦マネジメント」を必ず受講し、残り3つ以上の研修を修了。
→1分野受講時間:15時間以上 ×4分野 =計60時間以上必要
・職務分野別リーダーは、担当する分野研修を修了。
→該当する1分野のみなので、受講時間:15時間以上必要
上の役職になるほど必要とされる研修の数も増えて、その分時間もかかってしまいます。

キャリアアップ研修は全国の都道府県で行われており、どの県にいても受講・利用することが可能です。また、受講料は無料で受けられて自己負担はテキスト代のみとなっているのも嬉しいポイントです。公立保育園では、キャリアップ研修は業務の一環として扱われるため給料も交通費も出る園が多いようです。一方、私立保育園の場合その園の方針によって扱いが異なりますので、興味のある方は一度園に確認してみるといいですよ。
一度研修を修了すれば転職、離職、復帰の際にも有効なので他県に引っ越したり、産後職場復帰を考えている方にとってもキャリアをアピールすることができ、転職活動も優位に進めることができます。
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このキャリアアップ研修は、ほかの保育士への助言や指導、リーダー的な役割を目指す方のための制度です!今後のキャリアプランを見据えて、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

(参考:厚生労働省『保育士のキャリアアップの仕組みの構築と 処遇改善について』)

処遇改善手当をもらえる?もらえない?

お財布を持ってため息をつく女性
保育士さんにとって、給与アップのチャンスでもある処遇改善手当。役職がなくても、約10%の手当はぜひ受けたいところですよね!しかし実は、すべての保育士さんが処遇改善手当を貰えるわけではないようです。その違いについてあらかじめ注意しておきましょう。施設形態や育児休暇などによって手当が支給されないこと以外にも、「処遇改善手当」を目的とするうえで注意しなければならないことがいくつかあります。
■施設によってもらえる?もらえない?
処遇改善手当は、国から補助金として支給されるものとなるため基本的には認可保育園のみが対象となります。認可外は補助金が受け取れないため、その分利用者の保育料を高く設定し運営する形となっています。処遇改善手当を希望される際は、認可保育園の求人を中心に探してみましょう。
■パートや派遣社員は対象になる?
園長または主任保育士を除いた、園に在職するすべての職員が手当の対象となります。パート勤務、派遣社員に限らず、栄養士、調理員、送迎バスの運転手なども対象に含まれます。
■育児休暇中も支給してもらえる?
育児休暇中も処遇改善手当を得られるかという点に関してですが、通常、育児休暇中は給与自体支払いが行われないため処遇改善手当も貰えません。

手当の使い道は保育園次第!?

処遇改善手当は、認可保育園に国から一括で支給されます。その後、補助金をどう分配するかは運営者が自由に決められるため、園によっては規定の金額が支払われない可能性があります。例えば、「毎月の手当としてではなく、年始まで手当を貯めておき春のボーナスとして支給する」といった園もあれば、満額きちんと毎月支払われる園もあります。
また、新しい役職に就いても給与が上がらないといったケースも少なくありません。職務分野別リーダーは、役職に就いたすべての人に一律5,000円を支給する決まりとなっています。しかし一方で、副主任保育士や専門リーダーに関しては、役職に就いた人数の約半数に4万円を支給すれば、残りの補助金はどう分配してもいいということになっているのです。

貰える人数に制限がある

副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーとご紹介した3つの役職ですが、条件を満たしたすべての保育士さんがなれるというわけではありません。副主任保育士、専門リーダーは園に在職する保育士全体の1/3、職務分野別リーダーは1/5の人数となります。例えば、職員17名が在職する保育園の場合、園長、主任保育士を除く15名の保育士の中から副主任保育士・専門リーダーになれるのは5名。職務分野別リーダーは3名のみ。たとえ同じキャリアを積んでいたとしても、園側から適任だと判断されなければ役職を得ることはできませんし、もちろん処遇改善の手当を受けることもできないのです。

都道府県や地域による待遇の差がある

国が設立した「保育士さんのための処遇改善制度」ですが、実際は物価の違いや保育士の需要の違いにより、地域によって支給される額に大きく差ができてしまっています。例えば、東京都では「キャリアップ補助」という経験7年以上の保育士さんを対象とした施策を打ち出しました。4万円の処遇改善手当からさらに上乗せした4万4,000円を支給しているのです。東京都は、全国でも「保育士の求人数1位」と常に保育士の需要が高い地域。求人数が多いということは、それだけ保育士さんの需要が高く供給(求職者)が見合っていないということがわかります。そのため、東京都では処遇改善に関する事業も積極的に取り組んでいます。一方で、人口が少なく過疎化が進む地域では自治体の財源的にも出資が難しく、補助が行き届きにくい傾向にあります。このように各地域の人口や収税の差によって、保育士さんの給与額にも大きく差がひらいてしまっているのが現状です。

「処遇改善」を求めるなら…転職もアリ!

さまざまな取り組みが国の支援により行われていますが、その待遇を受けられるかどうかはやはり「保育園次第」ということです。
みなさんが現在働く保育園ではどうですか?経験やスキルをきちんと考慮して、適正な昇給制度が設けられていますか?
経験年数は長いのに、一向に給料が上がらないと悩んではいらっしゃいませんか?

今よりも昇給制度がきちんと整えられていて、経験やスキルを正当に評価してくれることを望むなら、思いきって転職してみるのもいいかもしれません。小規模の保育園や新設保育園のような、経験年数をフルに活かせられる職場だと比較的早く役職を得られることもあります。しかし実際に転職をするとなると、求人票を見ただけでは具体的な園の人事方針など、わからないこともありますよね。そこでおすすめなのが「保育士ワーカー」です!
まずは保育職に特化したプロのアドバイザーに、あなたの希望する条件を相談してみましょう。アドバイザーは各保育園と直接やり取りを行っているため、園の給与形態や昇給、役職などに関して情報を把握しています。例えば、気になる求人を見つけたが“具体的な人事評価を知りたい場合”、アドバイザーはその園の情報をもとにあなたの希望に合うかをアドバイスしてくれます。気になる求人がまだ見つかっていなくても、相談内容と比較し的確に求人票をピックアップしてくれますよ。希望の求人が見つかれば、相談を受けたアドバイザーがそのまま転職活動のサポートも行います。面接の際には同行しその場で条件の交渉もしてくれます。もちろん、入職後のアフターフォローまで丁寧に対応してくれるので安心ですね。
現在働いている保育園の待遇にお悩みの保育士さんは、ぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

保育士の処遇改善額は今後も上がる!

保育士とお給料袋
平成25年(2013年)から保育士さんの処遇改善が行われるようになり、今現在も徐々に手当の支給額は増え続けています。保育士さんにとって喜ばしい制度ですが、今だに処遇改善手当を貰えていない方がいることも事実です。こういった不正受給を防ぐために、現在東京や神奈川、沖縄などでは、保育士の処遇改善対策としてさまざまな取り組みを行っています。しかし、それも「一部の県のみ」と完璧に解決できたわけではありません。保育士さん自身が改善できることといえば、やはり今より昇給制度が整った園に「転職」することではないでしょうか?いつかきっと手当を貰えるはず!と頑張り続けるのもいいですが、きちんと職員を評価し、形(手当)として還元する、そんな優良保育園を探してみることもときには必要なことかもしれませんよ。
保育士・幼稚園教諭・保育教諭などの就職・転職をお考えの方は、ぜひ保育士ワーカーにご相談ください!
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