【徹底解説】地域限定保育士とは？保育士試験との違いや難易度は？

「保育士になりたい」「保育士資格を取得してみようかな？」と考える人のなかには、地域限定保育士という制度を聞いたことがある人も多いでしょう。

地域限定保育士とは、保育士不足解消のために行政によって導入された制度です。
この記事では、地域限定保育士の概要や通常の保育士との違いを分かりやすく解説します。

また、実際に受験を検討する人に向けて、試験の詳細もご紹介しますので参考にしてください。

地域限定保育士とは？

地域限定保育士は、正式には「国家戦略特別区地域限定保育士」と呼ばれる保育士不足解消のための制度です。

地域限定保育士試験に合格すれば、特定の地域にて一定期間のみ保育士として働けます。
ここからは、地域限定保育士の概要を解説します。

地域限定保育士の概要

近年、待機児童や潜在保育士の増加により、保育士不足が問題視されています。
全国的な保育士不足や待機児童解消のため政府が打ち出したのが、地域限定保育士です。

今まで通常の保育士試験は、年に1回しか実施されていませんでした。
保育士の数を増やすため、平成28年から年2回の実施へと変更されました。
さらに、地域限定保育士の試験を設けて、保育士を目指せるチャンスを増やしたのです。

参考：保育士の登録「地域限定保育士の制度」

地域限定保育士の難易度や合格率

地域限定保育士の難易度は、通常の保育士試験と大差ありません。出題内容も同じなため、勉強すべき科目も共通しています。

なお、近年の保育士試験合格率は20％前後で推移しています。地域限定保育士試験も、同等程度の難易度といえるでしょう。
参考：厚生労働省「保育士の現状と主な取組」

地域限定保育士試験は、通常の保育士試験と同じく9科目の筆記試験を受験する必要があります。
すべての科目で6割以上の正解を出さなければならないため、難しいと感じる人も多いかもしれません。
とはいえ、一度合格した科目は3年間有効となるため、数年かけて合格する人も多いようです。

一般的な保育士との違い

地域限定保育士と一般的な保育士では、筆記試験の内容も同じで、保育士としての仕事内容にも差はありません。
しかし、地域限定保育士は対象地域にて3年間しか働けないという制限があります。

また、地域限定保育士試験の場合は、保育実技講習会を受講することで実技試験が免除されるといった違いもあります。

地域限定保育士を目指すメリット

筆記試験の内容が同じで、難易度や合格率も変わらないのであれば「通常の保育士試験を受験した方が良いのでは？」と考える人も多いのではないでしょうか？

3年間同じ地域でしか働けない点も、人によっては不自由に感じるかもしれません。
しかし、地域限定保育士試験には以下のような3つのメリットがあります。

実技試験免除のためピアノが弾けなくても良い

通常の保育士試験の場合は、筆記試験合格後に実技試験を受験する必要があります。音楽・造形・言語の3種類があり、ピアノを弾いたり、絵画で保育の一場面を表現したりする技術が求められます。

しかし、地域限定保育士試験の場合は、保育実技講習会を受講すると実技試験が免除されます。「ピアノが苦手」「人前で素話する自信がない」などと考える人にとっては、とても有効な制度です。実技が免除されると思うと、保育士試験のハードルが下がるのではないでしょうか？

保育士として就職しやすい

通常の保育士試験と地域限定保育士の試験を合わせて受験すれば、合格するチャンスが増えるといえるでしょう。
また、地域限定保育士試験を実施している自治体は、保育士不足が深刻化していると考えられます。

そのため、保育士としての有効求人倍率が高いことが推測できるでしょう。
つまり、地域限定保育士になれば、就職先が見つかりやすいといえるのではないでしょうか？

3年後は全国で働ける

地域限定と聞くと、通常の保育士資格より都合が悪く感じるかもしれません。
しかし、3年後には全国どこでも、普通の保育士として勤務できます。

この制限は、3年間保育士として勤務していなくても同様です。「今住んでいる地域から引っ越しする予定はない」など、ライフプランによってはデメリットにならないといえるでしょう。

地域限定保育士を目指すデメリット

次に、地域限定保育士の試験を受けるデメリットを解説します。
メリットと合わせて確認しておきましょう。

地域限定保育士を実施している自治体が少ない

地域限定保育士試験を実施している自治体は限られています。
年度ごとに変更となることもあり、希望の地域で受験・勤務できない可能性もあります。

実施されている地域に住んでいなくても受験は可能ですが、そもそも住んでいる場所が離れているとなると合格後の勤務が難しいといえるでしょう。

通常の保育士試験と試験内容に差がない

地域限定保育士試験の試験科目は、通常の保育士試験と同じです。
前述したように、実技試験には講習という選択肢がありますが、筆記試験科目に変わりはありません。
ならば、通常の保育士試験に合格して、勤務場所に制限がない方が良いとも考えられます。

実技試験に苦手意識がないのであれば、あえて地域限定保育士試験を受ける必要はないのかもしれませんね。

3年間は同じ自治体でしか勤務できない

資格取得後のライフプランが決まっている場合は問題ありませんが、人によっては3年間同じ自治体でしか勤務できない点はデメリットになりえます。
「一人暮らしをやめて実家に帰る」「結婚して夫の転勤についていく」など、引っ越しなどの予定がある場合は不利といえるでしょう。

地域限定保育士試験受験の詳細

ここからは、地域限定保育士試験の詳細を解説します。
受験方法や受験内容など、具体的に説明しますので参考にしてください。

地域限定保育士試験の受験方法

■受験資格

地域限定保育士試験の受験資格は、通常の保育士試験と同じです。

一般の大学、短期大学、専門学校を卒業している
児童福祉施設で2年以上、2,880時間以上勤務している（高等学校・中等学校卒）
児童福祉施設で5年以上、7,200時間以上勤務している（義務教育修了）

各学校の卒業時期によって条件が異なることもありますので、保育士試験の受験資格を確認してみてくださいね。

参考：一般社団法人全国保育士養成協議会

■受験地域

地域限定保育士試験が開催されている地域は、年度によって異なります。
保育士確保を目的としているため、すべての地域でおこなわれているわけではありません。

過去には、千葉県・沖縄県・仙台市などで実施されています。
近年では主に、神奈川県（独自実施）・大阪府で実施されているため、詳細は各自治体に問い合わせてみましょう。

参考：令和3年神奈川県保育士試験

■受験日程

地域限定保育士試験の受験日程は、自治体によって異なります。
まずは手引きを取り寄せる必要があるため、配布機関や申請時期を見逃さないよう注意しましょう。

	神奈川県	大阪府
受験の手引き配布	4月	7月
受験申請	5月初旬まで	7月下旬まで
試験日程筆記／保育実技講習会	8月／10月	10月／12月

■受験にかかる費用

地域限定保育士試験の受験には、受験手数料として12,700円、合わせて郵送料がかかるケースもあります。
支払方法も自治体によってそれぞれ異なるため、受験申請の手引きをよく確認してくださいね。

地域限定保育士試験の受験内容

次に、地域限定保育士試験の受験内容について解説します。
筆記試験科目や実技試験科目は通常の保育士試験と同様ですが、合わせて確認してみましょう。

■筆記試験

筆記試験は以下の8科目、2日に分けて受験します。すべての科目において、6割以上の得点が必要です。

保育原理
教育原理及び社会的養護
子ども家庭福祉
社会福祉
保育の心理学
子どもの保健
子どもの食と栄養
保育実践理論

※2020年から「児童家庭保育」は「子ども家庭福祉」へ変更されました

参考：一般社団法人全国保育士養成協議会

■実技試験

実技試験では、音楽・造形・言語の3つの分野から2つを選択します。それぞれ、出題内容は以下のとおりです。

音楽に関する技術	課題曲を弾き歌いする
造形に関する技術	保育の一場面を絵画で表現する
言語に関する技術	課題の昔話を3分間で素話する

参考：一般社団法人全国保育士養成協議会

■実技講習

地域限定保育士試験の筆記試験に合格後、保育実技講習会に参加できます。開催する自治体にもよりますが、5日間程度の講習参加が必要です。開催される講習は以下のとおりです。

音楽表現
造形表現
言語表現
事前指導
保育実践見学実習
事後指導

新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、内容が変更されている可能性もありますので、各自治体のホームページにて確認しておきましょう。

地域限定保育士になるための勉強方法

地域限定保育士試験は、通常の保育士試験と同じ内容が出題されます。
そのため、通常の保育士試験を受験するつもりで勉強することをおすすめします。

筆記試験は8科目と範囲が広いため、効率の良い勉強方法が求められます。
独学で勉強する人は、参考書や過去問題で試験対策をおこなうと良いでしょう。

独学では不安を感じるという人は、通信教育の利用もおすすめです。
添削サポートを受けられたり、e-ラーニングにて講義を受講したりできるものが良いでしょう。
自身のライフスタイルに合わせた学習方法や、無理なく続けられる方法を探してみてくださいね。

地域限定保育士として働く流れ

地域限定保育士試験のメリットやデメリットを踏まえて「保育士を目指そう」「受験してみよう」と思った人も多いでしょう。
ここからは、地域限定保育士試験の受験を検討している人に向けて、受験後の流れを簡単に解説します。

試験に合格する

地域限定保育士試験に合格するためには、筆記試験8科目、すべて6割以上の得点が必要です。
全科目合格したのち、保育実技講習会に参加します。準備されている講習をすべて修了すれば、合格となります。

登録手続き後と保育士証を受け取る

保育士実技講習会の講義を修了すると「国家戦略特別区域限定保育士試験合格通知書」が届きます。
その合格通知をもとに、受験した都道府県知事または政令市長に対して、地域限定保育士としての登録手続きをおこないます。

申請するには、登録の手引きを取り寄せる必要がありますので、保育士登録サイトをご確認ください。
参考：保育士登録「国家戦略特別区域限定（地域限定）保育士登録申請」

対象地域で求人を探す

保育士登録を済ませると、地域限定保育士として働けます。
合格通知がきた段階ではなく、保育士として登録してから3年間は特定の地域でのみの勤務となりますので注意してください。

地域によっては、就職活動の手助けを受けられるケースもあります。
いきなりの勤務が不安と感じる人は、無料セミナーなどの受講がおすすめです。

まとめ

地域限定保育士は、保育士不足解消のために設けられた制度です。
3年間はその地域でしか勤務できないという制限はありますが、4年目からは通常の保育士と同様に全国どこでも勤務可能です。

通常の保育士試験と、内容に大きな差はありません。
しかし、地域限定保育士試験の場合は、実技講習会へ参加することでピアノや造形などの実技試験が免除されます。
実技試験に苦手意識を持っている人にとっても、とても良い制度といえるでしょう。
合わせて、地域限定保育士の試験が開催されている地域は限られています。
まずは希望の地域で開催されているかどうか、確認してみてはいかがでしょうか？

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