子どもの自立心を育てる保育とは?10の姿を意識した具体的な実践事例

青空と手のひら
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子どもの健やかな成長に欠かせない「自立心」。子どもが何事にも自信を持って主体的に取り組めるよう、家庭と保育園の両方からのアプローチが欠かせません。この記事では、子どもの自立心を育てるための保育について解説します。具体的な保育の実践例も紹介しますので、参考にしてください。

10の姿のひとつ「自立心」とは?

砂場で遊ぶ子供
まずは、保育の観点から自立心について解説します。

10の姿とは

保育に関する考え方を定めた「保育所保育指針」。保育内容の目標として分けられた「5領域」。保育園では、それぞれに記された内容を意識しながら保育をおこなっています。

そして、総則にて示されているのが、5領域をもとにした「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」です。その姿は10つの項目に分けられていることから「10の姿」と呼ばれています。

1. 健康な心と身体
2. 自立心
3. 協同性
4. 道徳性・規範意識の芽生え
5. 社会生活との関わり
6. 思考力の芽生え
7. 自然との関わり・生命尊重
8. 数量・図形・標識・文字などへの関心・感覚
9. 言葉による伝え合い
10. 豊かな感性と表現


10の姿の2つ目に記されているのが、今回注目したい「自立心」です。つまり、保育士は幼児期の終わりまでに、子ども達の自立心を育てるための関わりを意識する必要があるというわけです。

自立心とは

10の姿では、自立心について以下のように記しています。 
幼児期の終わりまでに育って欲しい姿【自立心】
目的
・身近な環境に主体的に関わりいろいろな活動や遊びを生み出す中で、自分の力で行うために思い巡らす
・自分でしなければならないことを自覚して行い、諦めずにやり遂げることで満足感や達成感を味わいながら、自信を持って行動するようになる
自分の力でできることを考えておこなったり、困ったことがあれば先生やお友達の助けを借りたり…。自分なりに工夫しながら物事と向き合う力を「自立心」と呼びます。できることが増えると、満足感や達成感を味わえます。その積み重ねが、さらなる成長につながるのです。

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自立心の芽生えはいつ?どんなこと?

靴下をはいている様子
子どもは、さまざまな年齢で自立心の育ちが見られます。ここからは、その事例を具体的に紹介します。

2歳/「どれもイヤ!」

着替えやオムツ替えなど、さまざまなシーンで自己主張を繰り返す2歳児。なんでも「イヤ」と応えることから、イヤイヤ期とも呼ばれます。そのような主張は、自我の芽生えや自立心の育ちが原因と考えられます。

2歳ではまだ、言葉でしっかり気持ちを伝えられませんが「これはイヤ」「こうしたい」という思いを抱くことが、自立心の第一歩といえるでしょう。

3歳/「自分でやる!」

3歳にもなれば、イヤなことやしたいことを少しずつ言葉にして伝えられるようになります。また、身体能力の発達も著しく、今までよりもできることが多くなるのも特徴のひとつ。なんでも「自分でやる」という意欲が高まる時期です。

まだまだ何をするにも時間がかかる時期ですが「靴は自分で履く」「ボタンは自分で留める」などは、時間を取ってやらせてあげたいところ。子どもの「やりたい」に寄り添い、自立心を育てることが大切です。

4歳/「自分で決める!」

日々の生活リズムを理解し、見通しを持って行動できるようになる4歳児。自立心の育ちにより、自分のことは自分で決めたいという意欲が高まります。

「これはイヤ!こっちがいい!」「今はしない!あとで!」など、自分のペースを主張できるようになります。子どもの意見を取り入れることは、そのあとの責任感の芽生えにもつながるといえるでしょう。

5歳/「認められたい!」

5歳児になると、簡単なルールやマナーを守れるようになります。お友達との関わりも活発になり、そのなかで競争心が芽生えることも。

そして、難しい事柄にチャレンジすることで「褒められたい」「認められたい」という欲求が強くなります。諦めずに最後までやり遂げる経験を積むことで、さらなる自立心の成長が期待できます。

【実践事例】自立心を養う保育とは?

考える保育士さん
ここからは、自立心を養うための具体的な保育事例をご紹介します。

事例1 家庭との密な連携

3歳児のかなこちゃんは、あまり自分で保育園バッグを開け閉めしようとしない。シール帳やコップなどを取り出すときは、いつも保育士が手を添えている。必要なものを自分で出し入れできるよう、家庭との連携が必要と感じた。登園準備を毎日自分でできるよう知らせ、その後の様子も見守っていく。

子どもの様子を家庭と共有し、双方からアプローチすることで効率的に自立心を高められます。事例のように、登園に必要なものを自分で準備できるようにするのも、自立への大きな一歩。手伝って当たり前だった事柄を見直し、チャレンジする機会を設けることが大切です。

事例2 達成できる目標の設定

4歳児のみなとくんは、新しいことへのチャレンジが苦手。運動会で披露するダンスの練習では、周囲の様子をうかがい自信がなさそうな表情を見せる。保育士と1対1で練習すると、少しずつ振りを覚えられるように。まずはワンフレーズずつ、小さな目標を立て成功体験を積めるようにする。

自立心を育てるため、達成できる目標を立ててチャレンジと成功を繰り返せるようにします。その際、結果ではなく頑張りを大袈裟に認めるのがポイントです。成功体験は自己肯定感を高めるだけでなく、その行動に伴って責任感が芽生えていきます。

事例3 自分の良いところ探し

5歳児のゆみちゃんは、口癖のように「いいな」「私にはできない」と言う。自信のなさは行動にも表れ、自己主張が少ないように感じる。自分の良さを自覚できるよう、保育に「良いところ探し」を取り入れる。お友達の良いところ探すなかで、自分の良いところを知り、自信につなげられるようにする。そのうち「私はお掃除がうまいから任せて!」など、自信のある言葉が聞けるようになった。

お友達の良いところを探しているうちに、自分の良いところに気が付けます。「自分にならできる」と、自信を持つことがチャレンジする力につながるのです。何事にも臆することなくチャレンジできれば、自立心の育ちに良い影響を与えるでしょう。

事例4 トラブル解決の体験

4歳児のゆうくんは、度々保育士に「ズボンが濡れた」「手にクレヨンがついた」などと報告にくる。自分で解決できるよう、くり返し「着替えようか」「手を洗おうか」などと解決方法を示し、最終的には「どうしたら良いかな?」と問いかける。そのうち「ズボンが濡れたから着替えるね」と報告にくるようになり、最近では「ズボンが濡れたから着替えたよ」と言えるようになった。

問題を自分で解決するプロセスは、子どもの自立心に大きな影響を与えます。とはいえ、いきなり「自分で考えて」と突き放してしまうと、自信を喪失してしまう可能性も。自立心を育てるためには、解決方法を示したうえで、どうすれば良いのか自分で考えられるよう促すことが大切です。

事例5 思いを言葉にして伝える機会

5歳児のれんくんは、自分の気持ちを言葉にすることが苦手。遊びの希望はもちろん、困ったことを伝えることにも苦手意識を持っている。朝の会で一言スピーチを取り入れるなど、言葉で伝える機会を設けることで自信を持てないかと考えた。自分の発した言葉を、周囲が温かく受け止めてくれる経験により、少しずつ自信を持って発言できるようになった。

臆することなく思いを伝えることは、自立に欠かせないものです。しかし、発言に苦手意識を持っている子どもは少なくありません。普段から話す力、聞く力を意識した保育が求められます。

自立心が育たないとどうなる?

うつむく男の子
幼児期の終わりまでに育って欲しい「自立心」ですが、うまく育たなかった場合、生活にどのような影響を与えるのでしょうか?ここからは、自立心が養われなかった場合の子どもの姿を解説します。

周囲の大人からの指示を待つ

自立心がなければ、何事も自分で決めて行動できなくなってしまいます。見通しを持って行動できれば良いのですが「他人の指示がないと動けない」ということも。大人が子どもの意見を聞かずに物事を決め、手や口を出し過ぎると指示を待つ子どもになってしまう恐れがあります。

お友達の動きを見てから行動する

自立心が育たないと「今何をすべきか」自分で考えて行動できなくなってしまいます。お友達の動きを見てから行動することが癖になってしまえば、さらに自立心が遠のいてしまいます。行動を否定された経験が「失敗したくない」という気持ちにつながってしまうのかもしれません。

自分の意見に自信を持てなくなる

自立心が育たないと、自分の意見に自信を持てなくなります。「間違っているかもしれない」「ダメと言われるかもしれない」という自信のなさは、新たなチャレンジの大きな障害に。自信をつけるためには、意見を受け止めてもらう経験が欠かせません。

自分の過ちを他人の責任にする

自立心が育たなければ、自分のことを自分で決められないようになります。そして、他人の意見に従っているばかりだと、責任感を抱きにくくなります。自分の失敗を他人の責任と考えたり、成功するために努力や工夫をしなかったり…。自立心の育ちは、責任感にもつながるのです。

手伝ってもらうことが当たり前になる

「自分のことは自分で」という気持ちが育たないと、手伝ってもらうことが当たり前になってしまう可能性があります。これは、自信のなさも影響していると考えられます。手を貸してもらうことが続けば、さらに自立心が遠のいてしまうといえるでしょう。

自立心を高めるために意識したいポイント

クレヨンで絵を描く女の子
自立心が育たないまま大きくなると、さまざまなシーンで生きづらさを感じてしまいます。そこでここからは、自立心を高めるために意識したいポイントをご紹介します。

大人がなんでも先回りしない

発達途中の子どもは、何をするにもまだまだ時間がかかってしまいます。その様子を見守れず、つい手を出してしまっていませんか?間違ったことや、遠回りしていることに対してつい口を出してしまう…。そんな先回りが、成長の機会を奪ってしまいます。

大人が先回りばかりしていると「困ったときに誰かが助けてくれる」「意見を聞いて行動しないと自信を持てない」という思考に。子どもの意欲を認め、先回りせず見守ることが大切です。

大人の偏った価値観を押し付けない

「すごい」「かっこいい」などの基準は人それぞれです。しかし、大人が偏った価値観を植え付けることで、子どもはその言葉が正解だと信じてしまいます。

「みんな違ってみんな良い」「結果よりも頑張った過程が大切」など、個性を認める指導を意識することで、子どもの自立心を尊重できるといえるでしょう。

子どもの前向きな意欲を受け止める

子どもの自立心を育てるためには、子どもの意欲を受け止めることが大切です。ときには子どもの「やってみたい」の気持ちに寄り添えないこともあるでしょう。

しかし、それが繰り返されると、子どもが行動する前に周囲の顔色をうかがってしまう可能性があります。まずは意欲を認め、チャレンジする気持ちを失わないようにフォローしたいですね。

まとめ

この記事では、子どもの自立心について解説しました。幼児期の終わりまでに育ってほしい「自立心」は、将来どのような大人になるか大きな影響を与えるといえます。ほかの子どもと比べず、その子に合った環境で成長を見守ってあげることが大切です。
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