保育室の環境構成を工夫しよう!年齢別の具体例や配慮するポイント

子どもが主体的に活動をおこなうために必要な「環境構成」。保育をおこなうときは、保育所保育指針をもとに、環境構成を含めた保育計画を考える必要があります。しかし、保育士のなかには「年齢に合った環境構成が難しい」「いつも同じ環境構成になってしまう」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、保育における環境構成のポイントや具体例を解説します。
保育における「環境構成」とは
環境構成とは、保育活動の前に準備・確認しておきたい環境作りのことです。子どもが自ら行動する「主体性」を大切にするためには、環境を整えておく必要があります。そこでまずは、環境構成の概要を確認しておきましょう。
保育所保育指針
保育をおこなうときは、子どもの発達に合った内容を提供できるよう指導案を作成します。指導案には、活動のねらいや配慮事項などと合わせて、環境構成も記載します。指導案は、厚生労働省が定める「保育所保育指針」をもとに作成するのが基本です。保育所保育に関する基本原則では、保育の環境に関して以下のように記されています。
保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子どもの生活が豊かなものとなるよう、計画的に環境を構成し、工夫して保育しなければならない。
環境を構成する際に留意するポイントについては、以下のように記されています。
・自発的に活動し、さまざまな経験を積めるよう配慮する
・活動を豊かに展開できるよう設備や環境を整える
・保健的環境や安全の確保に努める
・温かさや親しみのあるくつろぎの場にする
・活き活きと活動できるよう配慮する
・周囲の子どもや大人と関われる環境を整える
環境構成の要素
保育に必要な環境構成には、おもに4つの要素があります。
人的環境
「人的環境」とは、人と関係する環境のことで、子どもと関わる保育士の表情・動作・言葉などを指します。あたたかい目配りが子どもを安心させる要因となるため、穏やかな雰囲気のなかで保育することが求められます。
物的環境
「物的環境」とは、おもちゃや遊具、壁面などのことで、子どもの興味・関心を惹きつけるために必要な環境構成です。物の配置により、自発的な動きを促すだけでなく、ケガや事故を防ぎます。また、掃除や換気により安全性や清潔感を大切にすることも物的環境のひとつです。
自然環境
園庭や戸外で触れ合う、自然に関係する事柄を「自然環境」といいます。季節感を味わうために戸外に散歩に出たり、より自然を身近に感じられるよう生き物や植物を育てたり。自然からさまざまなことを学べるよう、環境を構成します。
社会環境
異年齢や周辺住民との触れ合いにより、コミュニケーション能力を培うのが「社会的環境」です。遠足や老人ホーム交流、バザーなどで、保育園の中だけではできない経験を積みます。戸外に出て、交通ルールなど社会的なマナーを学ぶことも大切です。
このように、人・物・場所を意識して環境構成を整えます。それぞれの要素をバランス良く考慮することで、子どもの成長を促します。
【年齢別】環境構成の具体例
ここからは、環境構成の具体例を年齢別にご紹介します。
0歳児
・ねんね期、ハイハイ期などの子どもが交わらない環境を整えて危険を回避する
・それぞれの移動を促すため、トンネルやマットなどの遊具を配置する
・ぬくもりを感じられる家具や壁面を配置して、安心して過ごせるようにする
・担当制やグループ制などを取り入れて、継続的な保育で愛着関係を築く
・ハイハイや歩行時に危険がないよう、保育室内の整理整頓を心がける
1歳児
・廊下を運動スペースにするなど、月齢ごとに活動を分ける
・好奇心・探求心を満たすためにさまざまな素材を準備する
・指先をしっかり使って遊べるおもちゃを取り入れる
・トイレトレーニングに向けて、清潔なトイレや明るい動線を構成する
・離乳食の段階やアレルギーをふまえた食事スペースを確保する
2歳児
・一人遊びや並行遊びを十分楽しめるようスペースを確保する
・遊びのイメージを膨らませられるよう、十分な用具を揃える
・遊びを分散して落ち着いて遊び込めるようにする
・豊かな体験を積めるよう園外での活動を取り入れる
3歳児
・豊かな想像力を培うためごっこ遊びを楽しめるスペースを設ける
・好きな遊びに夢中になれるようエリアを分ける
・身の回りのことを自分でできるよう自分で出し入れしやすい環境を整える
・季節の移り変わりを感じられるよう、戸外に出て遊ぶ
4歳児
・お友達と協力しながら遊べるように用具を準備する
・遊びを広げられるよう、保育室全体を使う
・折り合いをつけられないときのため、落ち着いて過ごせる空間を確保する
・約束を守ることの大切さを知るためルールのある遊びを取り入れる
5歳児
・自分で考えて遊べるよう、さまざまな用具を準備する
・さまざまな遊びにチャレンジできるようにする
・社会性を育てるための地域交流を取り入れる
・自然や命の大切さを学ぶため飼育を経験できるようにする
【季節別】環境構成の具体例
続いて、環境構成の具体例を季節別にご紹介します。
春
・自分のロッカーの配置がわかるようにする
・草花や虫を見つけ、観察したり触れたりする
・春の自然に興味を持てるよう、図鑑を用意する
・身の回りを整理整頓することで心地良く過ごせるようにする
夏
・雨の日に散歩に出かけることで、梅雨期の自然に関心を持つ
・水や砂、泥に触れる楽しみを味わう
・水遊びやプールなど、水に関する遊びを設定する
・虫カゴや虫取り網を用意しておき、いつでも虫取りを楽しめるようにする
秋
・秋の昆虫に興味を持ち、気になることを図鑑で調べられるようにする
・落ち葉や木の実の色・形に興味を持てるようにする
・集めた落ち葉や木の実を使い、さまざまな遊びを楽しむ
・絵本や図鑑をとおして異文化の行事に興味を持つ
冬
・冬ならではの事象に興味を持ち、戸外で触れる機会を設ける
・容器に水を入れて氷を作るなど、冬ならではの遊びを楽しむ
・お正月遊びを通して、数字や文字に関心を持つ
・寒さ対策をしながら、戸外で元気に体を動かす
指導案に環境構成を書くときのポイント
指導案に環境構成を書くときは、まず始めに活動場所を明記します。そして、活動場所の配置図をわかりやすく描きましょう。保育室であれば、ピアノやイス、おもちゃなどの場所を描きます。また、活動中に保育士や子どもがどの位置にいるか、配置を描き入れることも大切です。配置図と合わせて、活動で意識したいポイントを箇条書きで記すとわかりやすくなります。
環境構成で配慮しておきたいこと
環境構成を作成する際は、以下のようなポイントに配慮が必要です。
自発性
環境を構成するときは、自分でやってみたいと思う気持ちを刺激できるようにします。
遊び場や絵本のコーナーを魅力的に整えたり、遊びを発展できるよう用具を揃えたりすることが大切です。また、遊びにスムーズに移れるよう園庭に出やすい動線作りも欠かせません。
人間関係
誰でも自由に集まれる場所や動線を確保して、お友達との交流を楽しめるようにすることも大切です。異年齢交流や集団遊びを取り入れ、人との関わり方のなかで言葉でのやりとりを学べるようにします。
安全と健康
環境構成では、発達や行動を予想して安全を確保できるよう留意します。衛生・安全管理の意識を職員全体で統一することも大切です。また、静と動のバランスを考え、小さな空間を複数設けます。パーテーションで仕切ることで心の健康を保ったり、集中して取り組んだりできるでしょう。その際は、死角が生まれないよう注意してください。
まとめ
この記事では、保育室の環境構成について解説しました。環境構成は、子どもの発達に大きな影響を与えます。人・物・場所を意識して、成長や活動に合った環境を構成できるようにしたいですね。






