閉じる「師」と「士」の違いは？保育士はなぜ「士」なの？言葉の違いを解説
「保育士」「看護師」「介護福祉士」「教師」…さまざまな資格・職業がありますが「師と士」について疑問を持ったことはありませんか？自らが保育士を目指していれば「士」が使われていることを自然に認識しますが、普段漢字を目にすることが少ない資格・職業であれば、少し悩んでしまいますよね。
国家資格だから？給料が良い仕事だから？同じ「し」ではあるものの、使われる漢字が資格や職業によって違うと、なんだかその理由が気になりますよね。そこでこの記事では、資格や職業に関する「師と士」の違いについて解説します。
「師」「士」「司」それぞれどんな職業がある？
最初にお伝えしておくと、「師」「士」そして児童福祉司などの「司」の使用に、明確な法則はありません。漢字の意味を用いて名付けられたり、法律や条例で定められている資格の名前に沿っていたり、それぞれ由来が異なります。
まずは、資格ごとにどんな「師と士」があるか一例を確認してみましょう。
「師」のつく資格 | 「士」のつく資格 |
医師／看護師／助産師／保健師／きゅう師／獣医師／薬剤師／公認心理師／調理師／臨床検査技師／美容師／理容師 | 保育士／介護福祉士／臨床心理士／栄養士／理学療法士／歯科技工士／技能士／弁護士／行政書士／公認会計士／司法書士／税理士／建築士 |
ほかにもさまざまな資格がありますが、見比べてみても違いは明確ではありません。ここからは、「師と士」そして少数派ですが「司」のつく資格や職業について詳しく解説していきます。
「師」とは？
「師」は、おもに「医師」「看護師」「美容師」などに使用される漢字です。意味や使い方は以下のとおりです。
意味
漢字の「師」には、「教え導く」という意味があります。「師団」といわれるように、多くの人を導く人のことを指すため、大まかにいうと「指導者」というイメージです。
使い方
資格とは別に、「師」のつく職業として「講師」「牧師」「漁師」などがあります。明確な決まりがないため、当てはまらないものもありますが「師」は技術がある専門家を指す言葉としても使われています。ちなみに「看護師」は、長らく「看護婦」と呼ばれていましたが、性別にこだわらない呼び方として「看護師」と称するようになりました。
「士」とは？
「士」とは、おもに「保育士」「栄養士」「弁護士」などに使用される漢字です。意味や使い方は以下のとおりです。
意味
漢字の「士」には「学問を修めた男性」という意味があります。昔のイメージでいえば侍です。「学がある」という意味で、なんらかの「専門家」を指しています。
使い方
資格とは別に、「士」のつく職業として「騎士」「力士」などがあります。どちらも男性をイメージしてしまう人が多いかもしれません。古くは女性の職業が限定的で、主に男性が担う仕事に「士」がついていたという考え方もあります。ちなみに保育士は、長らく「保母さん」と呼ばれていましたが、性別にこだわらない呼び方として「保育士」と称するようになりました。
「司」とは？
「司」とは、おもに「児童福祉司」「保護司」などに使用される漢字です。意味や使い方は以下のとおりです。
意味
漢字の「司」には「公の役目を担うもの」という意味があります。大まかにいうと、役所や官庁などで働く人というイメージです。
使い方
資格とは別に、「司」のつく職業として「行司」「宮司」「祭司」などがあります。どれも重要な職務を司る立場といえます。ちなみに「司」のつく資格は少なく、いずれも公務員や民間人の呼び名です。
保育士はなぜ「士」なの？
今までの説明を聞くと、子どもの生活や学びを支える保育士は「教え導く」ことから「師」が適切ではないのかと考える人も少なくないでしょう。保育士は、昔は「保母」「保父」と呼ばれていましたが、平成11年の福祉法施行令の改正で今の名称に変更されました。平成15年には名称独占資格に規定され、国家資格になっています。「士」が採用されたのかは不明です。
国家資格かどうかは無関係
保育士資格について考えると、国家資格だから「士」だとも思えます。しかし「師」のつく資格のなかにも国家資格はあります。そのため、国家資格であるかどうかは無関係といえるでしょう。
取得できる資格の名称と同じ
「師と士」には明確な規準はありません。しかし、その職業に就くために必要な資格と職業名がリンクしていることは明確です。名称独占資格の場合は、資格のない人がその名前を名乗ってはならないという決まりがあるため注意が必要です。
まとめ
この記事では「師と士」の違いを解説しました。漢字の意味を理解しても、やはり謎は残ります。なぜ同じ食事に関する仕事なのに「調理師」と「栄養士」で「師と士」が異なるのか。なぜ同じ人の命に関わる仕事なのに「看護師」と「救急救命士」で「師と士」が異なるのか。明確に「師と士」をわける決まりはなく、資格や職業の漢字に悩んだときはその都度正式名称を確認するほかありません。
