保育士は「名称独占資格」!国家資格の種類や名称の違いをわかりやすく解説

保育士として働くために必要な保育士資格。国家資格のひとつですが、名称独占資格に該当していることをご存知でしょうか?保育補助など、資格がなくても保育に携わることは可能ですが、実は資格を持っていない人は保育士と名乗ってはいけないという決まりがあるんです。この記事では、国家資格における業務独占資格や名称独占資格について詳しく解説していきます。
保育士資格とは
まず、保育士資格について確認しておきます。保育士資格とは、児童福祉法に基づく国家資格です。保育士資格を取得することで、全国の保育園はもちろん、乳児院や児童養護施設、障害児施設、児童館などの児童福祉施設で勤務できます。
保育士は、以前は「保母」と呼ばれていた任用資格で、主に女性が働く仕事と認識されていました。しかし、男女雇用機会均等法の制定に基づき「保母」と合わせて「保父」という名称が広まりました。そしてさらに、児童福祉法の改定がおこなわれることで「保育士」という資格名称になり、のちに国家資格化されたものです。
保育士資格は、厚生労働大臣が定めた保育士養成施設に入学し、決められた単位を取得して卒業することで取得できます。また、都道府県知事が年2回実施している保育士試験に合格することでも取得できる資格です。なお、実際に保育士として勤務するためには、保育士資格の取得のほか都道府県への保育士登録が必要です。
国家資格にはさまざまな種類がある
保育士資格のほか、国家資格には以下のような種類があります。
・医師
・看護師
・保健師
・助産師
・社会福祉士
・介護福祉士
・弁護士
・税理士
・司法書士
・美容師
・栄養士
上記のほかにも、さまざまな資格があります。このような国家資格には「業務独占資格」と「名称独占資格」があります。なお、保育士は名称独占資格です。ここからは、それぞれの特徴について解説していきます。
業務独占資格
業務独占資格には、決められた資格を取得していない人は一定の業務をおこなえない、つまり「業務は資格取得者が独占的におこなう」という意味があります。おもに医師や看護師、弁護士などが該当します。
それぞれの仕事に関する法律により「〇〇でなければ〇〇をしてならない」などの条文があり、違反した場合には罰則規定があります。業務独占資格に定められている場合、法律によってその社会的地位が保証されているため、社会からの信頼性が高い仕事といえます。
名称独占資格
名称独占資格には、決められた資格を取得していない人はその名称を用いてはならない、つまり「資格取得者が名称を独占する」という意味があります。おもに保育士や栄養士、調理師などが該当します。
それぞれの仕事に関する法律により「〇〇でなければ〇〇という名称を使用してはならない」などの条文があり、違反した場合には罰則規定があります。なお、業務独占ではないため、資格なしでその業務にあたること自体は禁止されていません。
資格のない人が名称独占の「保育士」を名乗ったら…?
保育士資格は、国家資格のうちの名称独占資格に該当します。つまり、保育士資格がない人は保育士の名称を名乗ってはならないと決まっています。実際に、児童福祉法第十八条の二十三には「保育士でない者は、保育士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない」と記載されています。
なお、保育士の名称独占違反の罰則は30万円以下の罰金です。実際に罰金が課せられたケースがあるかどうかは定かではありませんが、保育士資格を取得していない人が保育士名乗ることは、固く禁じられています。
【Q&A】こんなときはどう名乗る?
保育士の名称使用に関して違反がないよう、シーンごとに名乗り方の例をご紹介します。
保育士を目指して学校に通っている
保育士を目指して養成校に通っている人は、おもに「保育学生」と呼ばれます。保育学生は、必要な科目を履修して卒業することで、保育士資格を取得できます。そのため、保育士と名乗ることはできません。職業を尋ねられたら「学生」と答え、保育関係で出会う人には「保育学生」と伝えると良いでしょう。
学校に通わず保育士試験を受けて資格を取得した
都道府県がおこなう保育士試験にて保育士資格を取得した場合、資格取得者であることから保育士の名称を名乗れます。なお、実際に保育士として勤務する場合は、保育士登録が必要です。保育士登録なく働くことはできませんので、注意が必要です。
以前は保育士だったが今は離職している
保育士資格を取得し、保育士として勤務していた場合は、離職しても保育士であることに違いはありません。しかし、離職したのちに保育士を名乗ると「今も保育士として働いている」と誤解されることがあります。保有資格を尋ねられたときは「保育士」と答え、雑談程度であれば「以前保育士として働いていました」と答えても良いでしょう。
資格はないが保育園でパートをしている
保育園では、保育士資格を持っていなくても保育補助として勤務可能です。しかし、保育士資格を持っていない場合は保育園で働いていても保育士とは名乗れません。職業を聞かれたときは「保育補助」と答えると良いでしょう。
資格はないが子どもを預かる仕事をしている
ベビーシッターやファミリーサポートとして子どもを預かる仕事をしていたとしても、保育士資格がなければ保育士とは名乗れません。資格がなくても保育の仕事には携われますが、名称の使用は禁止されています。職業を聞かれたときは「ベビーシッター」など、正確に伝えましょう。
認定こども園で保育教諭をしている
認定こども園で保育教諭として働くためには、保育士免許と幼稚園教諭免許が必要です。資格を取得していることから保育士を名乗れます。正確には「保育教諭」ですが、一般的にはあまり浸透していない呼び方かもしれません。困ったときは「保育士」「幼稚園の先生」と答えても良いでしょう。
まとめ
この記事では、保育士の名称独占資格について解説しました。資格がなければその仕事ができない業務独占資格とは違い、保育の仕事は資格がなくても携われます。しかし、資格がない場合はその名称、つまり保育士と名乗ることを禁止されています。職業を聞かれたときは、誤解を与えてしまわないよう、資格の有無に合った正確な回答を心掛けましょう。





