潜在保育士が復帰しないのはなぜ?保育を離れる理由や復帰支援について

保育士資格を持ちながら、保育士として働いていない「潜在保育士」。保育士資格を取得している人の数は年々増加しているにもかかわらず、保育士として働く人の数は微増程度に留まっています。潜在保育士と呼ばれる人は、なぜ復帰しないのでしょうか?この記事では、潜在保育士が復帰しない理由や、潜在保育士が復帰するときのポイントについて詳しく解説します。
保育士として働かない「潜在保育士」とは?
潜在保育士とは、保育士資格を取得したものの保育士として勤務していない人のことを指します。なお、潜在保育士には以下の2つのパターンがあります。
保育士として勤務したものの現在は離職している人
保育士として保育園や児童養護施設など、さまざまな社会福祉施設で働き、現在は離職している人を潜在保育士と呼びます。結婚・出産・育児などライフステージの変化により退職して働いていない人もいれば、保育業界から離れて別の仕事をしている人もいます。保育経験のある潜在保育士は即戦力にもなる貴重な存在ですが、家庭の事情やミスマッチなどさまざまな理由により復帰しない人が少なくありません。
資格を取得したものの保育士として勤務したことがない人
保育士資格を取得したものの、保育士として勤務したことがない人も潜在保育士と呼ばれています。保育士養成校にて保育士資格を取得したものの「保育実習への参加で保育士になる自信がなくなった」「ほかにやりたい職業が見つかった」などの理由で、違う道に進む人もいます。また、保育への興味・関心から保育士試験にチャレンジして資格を取得したものの、現場で働くことを躊躇しているというケースもあるようです。
潜在保育士の割合は全体の半数以上!
厚生労働省によると、2020年(令和2年)の保育士登録者は1,673千人、実際に保育士として勤務している人はわずか645千人です。保育士資格を持っている人のうち、半数以上が潜在保育士になっています。ここからは、その理由を詳しく解説していきます。
潜在保育士になった理由
保育士として働く人の平均経験年数は低く、約半分が8年未満で退職しています。保育士を退職する理由には以下のようなものが挙げられます。
・職場の人間関係
・給料が安い
・仕事量が多い
・労働時間が長い
・妊娠・出産
・健康上の理由
・結婚
・他業種への興味
・子育て・家事
・転居
・職業適切に対する不安
・保護者対応などの大変さ
・介護など家族の事情
・雇用期間満了
・配偶者の意向
転居や雇用期間満了の場合は、ほかの保育園を探すケースが多いでしょう。職場環境への不満から退職した人のなかには、より良い環境を求めて違う保育園へ転職する人もいます。しかし、保育に対して苦手意識を持ち「保育から離れたい」と、潜在保育士になる人も多いようです。
また、結婚・妊娠・出産・子育てなどのライフステージの変化からくる就労の難しさなど、戻りたくても戻れず潜在保育士になっているというケースも珍しくありません。
潜在保育士のままでいる理由
保育士を退職し、潜在保育士のままでいる理由には以下のようなものが考えられます。
・給料面が希望に合わない
・子育てや家事と両立できない
・健康や体力面に不安がある
・ほかの仕事に興味を持っている
・保育に対する自信がない
生活していくなかで、給料面は見逃せない問題です。生活スタイルや体調面に不安がないよう、パート保育士として働く選択肢もありますが、そのような選択肢でも給料面での問題はついてきます。また、一定期間保育を離れている、または一度も保育士として働いたことがない場合は、保育に自信が持てないという悩みも。潜在保育士には、そのような複雑な背景があると考えられます。
潜在保育士が求められる理由
潜在保育士はさまざまな理由により、保育現場で働くことを選択せずに生活しています。しかし、なかには「復帰したいけどできない」という人も少なくありません。そのような人にとって気になるのが、潜在保育士にニーズがあるかどうかです。
待機児童対策が進んでいたり、保育士の処遇改善により働く環境が変わっていたり、保育士が有り余っているのではないかと心配になる人もいるでしょう。しかし、保育士の需要はまだまだ高く、なんとか人材を確保しようと潜在保育士が求められています。保育士の有効求人倍率は全職種平均を大幅に上回っており、今後もその需要は変わらないといえるでしょう。
潜在保育士が復職を考える条件
厚生労働省の資料によると、過去に保育士として就業した人が再就業する場合の希望条件には以下のようなものがあります。
・通勤時間
・勤務日数
・勤務時間
・給与等
ここからは、潜在保育士が復職を考えるために必要な条件について詳しく解説します。
通勤時間
再び保育士に復帰するための条件として、全体の約8割が重要視しているのが「通勤時間」です。保育士には早番や遅番もあり、通勤時間がかかる場所だととても大変です。プライベートと仕事を両立するため、家から近い職場での勤務を希望する人が多いようです。
勤務日数
長く無理なく働くためには、勤務日数も重要です。平日プラス隔週の土曜日に勤務、平日の有給休暇は難しいとなると、体力的にも不安を抱えます。雇用形態にもよりますが、正職員であれば有給休暇の使用率、パート勤務であれば希望曜日を選べることなどが重要です。
勤務時間
自分の希望に合った勤務時間を選べるかどうかも、復職の大切な条件のひとつです。正職員として働く場合は早番・遅番があるかどうかや、残業の有無も気になるところです。パート勤務であれば朝からお昼まで、夕方のみなど、自分のライフスタイルに合った勤務時間があるかによって復職できるかどうかが決まります。
給与等
保育士として働き、生活していくには給与面の条件が整っていることも重要です。保育士の処遇改善により給与は右肩上がりになっていますが、満足できるだけの給与があるかどうかは人それぞです。そのほか、賞与や福利厚生など、復帰するにあたり条件のなるべく良い保育園をと考える人が多いのではないでしょうか?
潜在保育士が整理しておきたい復職の条件
実際に潜在保育士が復職を希望するときは、以下のようなポイントを意識しながら条件を整理しておきましょう。
施設の種類
保育士資格を活かせる施設は、保育園以外にも院内保育園や学童クラブなどたくさんあります。そのため、クラス担任やピアノ演奏など苦手な分野がある場合は、そのような業務のない施設を選ぶと良いでしょう。保育してみたい子どもの年齢、人数、仕事内容などの希望を整理して、施設の種類を検討してみましょう。
雇用形態
保育士として復帰後、無理なく働くためには雇用形態の選択が重要です。私生活に制限なく、しっかり働けるようであれば「正職員」、短時間勤務を希望する場合は「パート」がおすすめです。なお、保育園に直接雇用されない「派遣保育士」という選択肢もあります。給与面などを照らし合わせ、自分のライフスタイルに合った雇用形態を選択しましょう。
福利厚生
新たに保育士として勤務するにあたって、給料の最低条件や手当の希望などを整理しておくと、求人を探しやすくなります。今後、産前産後休暇や育児休暇を取得する予定がある場合は、取得率をチェックしておくのもおすすめです。
潜在保育士が知っておきたい復職支援
先述したように、潜在保育士は保育士不足解消に必要な人材です。そのような保育士が復帰しやすいよう、行政や自治体はさまざまな復帰支援をおこなっています。おもな施策は以下のとおりです。
・保育士・保育所支援センターにおけるマッチングシステムの導入
・安心して復帰するためのセミナーや研修の実施
・保育士への再就職準備に関する貸付制度
・未就学児をもつ潜在保育士に対する貸付制度
地域によって、支援内容や対象となる条件が異なる場合があります。当てはまるものがあるか、ぜひ調べて見てくださいね。
まとめ
潜在保育士の数は、保育士資格を取得している人のうち半数以上を占めています。その数から、保育士の大変さや継続の難しさが読み取れます。しかし、待機児童解消などのため、潜在保育士の力を必要としている保育園はたくさんあります。復帰する場合は条件を明確にし、無理なく長く続けられるようにしたいですね。






