待機児童の増加・保育士の採用難や離職率の高さが問題になっている中で、近年注目されている「派遣保育士」という保育士さんの新しい働き方をご存知ですか?全国に57万人いるとされる、保育士資格を持っているけれど保育士として働いていない『潜在保育士』。(※厚生労働省潜在保育士ガイドブックより)そんな潜在保育士さんに「待機児童解消」のためにも「それぞれのライフスタイルに合った働き方を提供していこう!」という施策として広まっているのが派遣保育士という働き方です。今回はそんな派遣保育士という新しい働き方について、どのような働き方なのか…給与や仕事量はどのくらいなのか…という疑問や不安にお答えしていきます。「保育士として働きたいけど、正職員で働くと”家事・育児との両立”が難しい」と感じている方や「空いている時間を使い、子育て経験を活かして保育がしたい!」と思っているママ保育士さんにもオススメできる働き方ですので、ぜひ参考にしてみて下さいね! 派遣保育士とは?給料や保険は?
一般に『派遣』と聞くと”不安定な職”というイメージがありますが、ここ数年で派遣社員を採用する企業も増えているうえ、派遣会社のサポートも充実しており”自由度の高い働き方ができる職”となってきています。正職員でもなくパートでもない「派遣保育士」とはどのような働き方なのか、正職員やパートと給料や保険・仕事量はどう違うのかが気になりますよね?まずは、パートとの違いやメリット、派遣保育士の仕組みについてのお悩み一つひとつにお答えしていきます。
Q1:派遣保育士とパートとの違いは?
A.契約期間の有無や雇用契約を結ぶ先が違う!
派遣保育士は、幼稚園・保育園との直接契約ではなく派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社から紹介してもらった勤務先で保育士として働く勤務形態のこと。仕事内容や勤務時間・勤務日数は事前に派遣会社との契約で決められていて、業務内容は基本的に「担任」という形ではなく「保育補助」になります。契約内容以外の仕事を任されることが少ないため、ブランクがあったり、未経験でも気軽に始めやすいというのがメリットです!パートと違う点は、派遣会社と雇用契約を結ぶので“給与”は派遣会社から支払われ、“雇用保険・社会保険”も派遣会社のものに加入するということです。そして、一番の大きな違いは『契約期間』があること。パートだと園側との直接契約となるので同じ場所で長く働くことが可能ですが、派遣保育士は同一就業先での勤務が労働者派遣法で決められています。現在、派遣会社から紹介される求人は契約期間が1ヶ月~3ヶ月になっているものが多いですが、契約の更新があれば当初の契約期間を超えて働くことが可能な派遣先も存在します。しかし、同一就業先での勤務は最大3年までと法で定められていますので、最大の勤務期間を超えての更新はできません。Q2:仕事量は多い?少ない?
A.仕事量(特に事務仕事)が少なく、子どもと関わる仕事が中心!
また、残業が少なく万が一残業しても残業代が派遣会社から支払われることがほとんど!
年間を通したクラス運営や信頼関係が必要な保護者との対応は、就業期間の決まっている派遣保育士には積極的に任せにくい…と考える園が多く、一人担任にしたり・役職に置くのではなく補助的な仕事がメインになります。なので、派遣保育士は正社員で働くより仕事量は少なく、残業も比較的少ない傾向にあります。Q3:就業時間や休みはどうなっているの?
A.ライフスタイルに合わせて勤務時間やシフトを決めることができます!
パートと同じように働きたい時間や曜日をライフスタイルに合わせて調整することができ「出勤日を扶養内に抑えたい」という希望も叶えやすくなっています。また、雇い入れ日より半年継続して勤務していること・全労働日の8割出勤していることという条件を満たしていれば、法廷通りの有給休暇も人材派遣会社から付与されることになっています。Q4:派遣期間が終わったらどうなるの?
A.新しい職場を紹介してもらうことができる
派遣保育士は同一事業所に勤務できるのは最大3年と法的に決まっていますが、派遣期間終了までに新たな派遣先を紹介してもらうことが可能です。そして、派遣先も院内託児所や駅ナカ託児施設など幅広いので、違った園や施設での経験を積むことができます!それ以外にも「紹介予定派遣」というシステムで派遣社員から正職員になるという選択肢もあります。Q5:給与額はどのくらい?
A.時給の相場はパートで働くよりも1~2割ほど高め!!
残業代や交通費についても支払われる場合が多い
給与が時給制というのはパートと同じですが、金額は勤務先ではなく派遣会社が設定し、その金額はパートで働くよりも1~2割ほど高めになっています。なぜ、同じ園で働くのに、パートよりも派遣保育士は高時給なのでしょうか?そもそも、慢性的な保育士不足により園側はコストをかけて求人を出していますが、なかなか応募が集まらないのが現状です。その点、派遣会社に紹介を依頼しておくことで欠員等の急な人手不足のときに「欲しい人材を迅速に紹介してもらえる」という園側のメリットがあります。そのため、高い紹介料を払ってでも派遣会社を使いたいと考える園が多いので、高時給が実現しています。正職員として働いていると発生することがほとんどない残業代も、派遣保育士であれば派遣会社からきっちり支払われる場合がほとんどです。交通費については全額支給ではなく上限が設けられている場合がありますので、念のために事前に派遣会社に確認をしておきましょう◎Q6:保険はどうなっているの?
A.労働条件などの加入条件を満たしていれば、派遣会社の社会保険に加入することができます!
社会保険の加入については、雇用形態ではなく労働基準法にのっとって決まります。加入条件は『週の労働時間が20時間以上 ・月額賃金が8万8千円以上・勤務期間が1年以上』と定められていますので派遣会社に自身が対象になるのかを確認する必要があります。派遣保育士として働くメリット
専門のアドバイザーが存在する
派遣会社には専門のアドバイザーが在籍しており、希望に沿った派遣先の紹介・派遣されたあとの園側との業務交渉を行てくれます。
アドバイザーは派遣されたあともしっかりとフォローしてくれるので、人間関係や園での仕事内容・労働上の不安などで困ったときに気軽に相談しやすいのがうれしいポイント。
また、自分からは園側に言い出しにくい「勤務先が合わない」「思っていたより仕事量が多い」というような悩みも、アドバイザーが間に立って伝えてくれるので、安心して相談できます。
給料についてもこれまでの勤務経験や持っている免許・資格を元にアドバイザーから園側に交渉してもらいやすいです。
これらは、派遣保育士として働くことの最大のメリットなので、アドバイザーにどんなことでも相談しながら自分が働きやすい環境を作ることができるといいですね◎
未経験やブランクがある人でも保育士として働きやすい
キャリアサポートが充実している派遣会社が多く、保育士資格は持っているがブランクがあったり・現場経験なし…という人でも安心して働き始めやすい環境にあります。
また、アドバイザーがブランクOK・未経験OKといった、自身の状況に合わせた園を紹介してくれるのでその点も安心して働きだしやすい要因の一つです。
また、派遣先も様々なものがあるので「こんな施設で働きたい」という希望も叶いやすく、色々な施設に勤務することで施設ごとの良さを知ることもできます。
そういった経験は、正職員として働きたくなったときの参考にすることができるので、幅広く経験を積みたい方にもおすすめです。
派遣保育士になるデメリットと注意点
派遣保育士では短期間(1ヶ月・3ヶ月~最大3年)の勤務である
クラス運営を担任として任されることは少なくフリーとしての業務が中心になるため、いつも同じクラスに入るとは限らず思うように子ども達との信頼関係が築けない場合があります。
逆に、フリーではなく補助的な役割の副担任として勤務した場合には、せっかく親しくなった子ども達の卒園までの姿を見届けられないまま契約期間が終わってしまうことも…。
派遣保育士の同一事業所での勤務が「最短1ヶ月~最大3年」というのはメリットでもありデメリットにもなりうる…ということですね。
派遣保育士と正職員をはっきり線引きしている園も存在する
保育補助という形の勤務になるので正職員の先生達と業務面や人間関係の面で明確な線引きをされ『自分がやりたい保育』や『もっとこうすればいいのに…』という提案がしにくく、それまでの現場経験が多い保育士さんほどモヤモヤした気持ちで保育することになるかもしれません。
また、正職員の先生達が会議をしているあいだも子ども達を任される場合もあるため、職員会議には参加できないことがほとんどです。
そのため、正職員の保育士さんとの情報の共有が難しい場合や、『正職員だから・派遣保育士だから』と線引きされていることで人間関係でつまずいてしまうことも。
「そういった環境で働きにくい」「出社するのが辛い」と思い悩む派遣保育士さんがいることも事実です。
園長や主幹教諭・主任といった役職には就けない
派遣保育士は有期雇用となるため、一人での担任や主任や園長などの役職を任されることはほとんどありません。
なので「ゆくゆくは主幹教諭や園長を目指したい」と考えている人は、派遣保育士ではなく正職員として働くことをオススメします◎
しかし、派遣保育士として色々な園や施設での経験を活かし「即戦力」として働けるようになってくると、派遣会社に給与交渉ができるので、そういった意味でのキャリアアップを目指すことは可能です。
正職員の様に働かざるをえない職場がある
『保育補助』という名目であっても保育業界は慢性的な人手不足のため、「保育補助だからこのくらいの仕事量だろう」と想像しているとズレが生じることも。
いくら残業代が派遣会社との契約で支払われるとしても「こんなはずじゃなかった」と、仕事内容の多さに嘆かなければならない…といった場合も存在します。
そのようなときには、派遣会社に相談して早めに対処しましょう。
派遣保育士の悩みとは?
派遣保育士の悩みとして雑務ばかりで子どもたちとあまり関わることができない・担任として働くことができない・ボーナスがないなどが上げられます。ですが、配属される園によって仕事内容も多少変わってくるため、派遣保育士が抱える悩みもそれぞれ変わってきますよね。
アドバイザーに相談するのも1つの手段ですが、ときには派遣先を変えてみたり、パートや正社員として直接雇用にするなど、環境を変えてみるのもいいのではないでしょうか?
派遣保育士に向いてる人・向いていない人
メリット・デメリットについてお分かりいただけたでしょうか?
そのうえで実際にどのような人が派遣保育士として働くことに向いているのかをまとめてみました。
派遣保育士に向いている人
派遣社員は派遣先を短い期間で転々とすることが多いため『環境の変化に柔軟に対応することができる』『初対面の人たちともすぐに打ち解けられ、社交性が高い』といった性格の人が向いています。
そして、ライフスタイルに合わせた働き方ができるからこそ『家庭環境や待遇を優先したい』『子育て経験を活かし、ママ保育士として働きたい』『少しでも時給の良いところで働きたい』『事務作業よりも、子どもとの関りを重視して働きたい』と考えている人が向いています◎ 派遣保育士に向いていない人
職場が年に何回も変わる場合もあるため『新しい環境になじむまでに時間がかかる人見知りの人』は派遣保育士として働くことに難しさを感じがち。
また『年収よりも“保育”という仕事にやりがいを重視する人』『担任としてキャリアを積みたい!』と考えている人は派遣保育士の「保育補助」という業務内容では物足りなく感じてしまうのでオススメできません。
また、主幹教諭や園長といった役職に就くためには10年程度の継続的な経験が必要となってくるので、役職に就くためのキャリアを積みたい人には正職員で働くことをおすすめします◎ 派遣保育士の色々な派遣先
派遣保育士として働ける場所は一般的にイメージされる幼稚園・保育園(共に公立・私立問わず)といった施設だけではありません!!
派遣会社によって差はありますが、学童保育・院内託児所・企業内託児所・駅ナカ託児施設・子育て支援施設・ベビーシッターといった幅広い就業先を紹介してもらうことができます。
また、それらのように継続的な仕事だけでなく、イベント会場などでの臨時の託児施設やキッズルームなどでの単発の求人があることも。
こうした求人があることで、子育て中のママ保育士さんが『週末だけ働きたい』『夫が休みの日だけ働きたい』といったときでも、希望の派遣先が見つけやすいといえます。
派遣会社の選び方と仕事の探し方のコツ
それでは、実際に派遣会社を選ぶときには、どのようなところに気をつければよいのでしょうか?最も大切なことは、保育を専門に扱っている派遣会社かどうかです。保育を専門に扱っている派遣会社であれば、派遣先の園や施設に詳しいアドバイザーが担当してくれるので、親身になって話を聞き自分に合った派遣先を紹介してくれます。そして、メリットにもあったようにアドバイザーは、就業後も派遣先の園でトラブルがあった際、園側とのあいだに立ち交渉してくれるので、働き始めてからの悩みも解消しやすいです。「保育士として働くことにブランクがある」「資格は持っているけれど現場に出たことがない」「保育士としての経験が浅いので、きちんと保育できるか心配」そんな人は派遣会社の研修制度やキャリアサポートが充実しているか
、というところも判断基準のひとつになります。そして、派遣保育士は期間限定の仕事であることを踏まえて、求人数
を確認しておくことも大切です!求人数が多い派遣会社に登録することで、派遣先との契約期間が終わったあとも途切れることなく次の仕事を紹介してもらうことができます。どのようなサポートがあるのかを知るために、まずはいくつかの派遣会社に登録するのもOK!!その中に、自分に合った勤務先を紹介してくれる派遣会社があるはずです。 条件が多すぎるとなかなか派遣先がみつからない!
企業内託児所や院内託児所・駅ナカ託児施設や未経験OKという派遣先は求人が比較的少ないので、担当のアドバイザーにしっかりと希望を伝えましょう。
また、まれに離職率が高い園も含まれていることあるので、派遣先を決めるときには要注意!!
派遣会社の担当アドバイザーとよく相談して下さいね。
派遣保育士として<br>眠っている保育士資格を活用しませんか?
これまであまり耳にしなかった『派遣保育士』という働き方についてご紹介しました。
正職員・パート・派遣保育士と色々な働き方がありますが、どの働き方にも優劣はなく子ども達にとって「先生」であることに変わりありません。
子ども達の命を預かる大切な仕事なので「派遣保育士だからこの程度でいいや」という気持ちではなく、「派遣保育士として子ども達のためにできることは何か?」ということも考えながら、保育業務に臨むことが何より大切です。
派遣保育士は、正職員として働くと、家事・育児との両立が難しい!体力的に厳しい!…でも、子どもと関わる仕事がしたい!!と思っている方にはピッタリの働き方と言えます。
また、これまで正職員として働いていて不安に思っていたことや、給料面や仕事量の悩みについても派遣保育士になることで解消されるかもしれません◎
派遣保育士にも向き不向きはありますが、少しでも興味があれば派遣会社を探してみてはどうでしょうか。
そして、ご自宅で眠っている保育士資格を活かして今回ご紹介した新しい『派遣保育士』という働き方に挑戦してみませんか?