近頃、一部の保育園や幼稚園が続々と『認定こども園』という施設に移行しています。現在働いている保育園が今後は認定こども園に移行するという保育士さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
保育園から認定こども園に移行することで、今までの環境とどう変わってしまうのか。そもそも『認定こども園』とはどんな施設なのか、保育士の資格だけで働き続けられるのか、今回そういった保育士さんの疑問にお答えします。
『認定こども園』とは?
認定こども園とは、保護者のニーズに合わせて「教育」「保育」を一体化した施設のこと。簡単に説明すると、幼稚園のように教育の時間を取り入れつつ、必要な子どもには保護者の就業時間に合わせて保育を行います。
認定こども園と認められるには、内閣総理大臣、文部科学省、厚生労働大臣が定める基準をすべて満たすことが条件。管轄は幼稚園が文部科学省、保育園が厚生労働省が行っていますが、認定こども園になると内閣府となります。 認定こども園のタイプ
認定こども園は、おもに4つのタイプに分類されます。
■幼保連携型
幼稚園と保育所の両方の機能をあわせもつタイプ。職員は保育士と幼稚園教諭の両方の資格が必須となる。
■幼稚園型
認可幼稚園の施設にて、保育が必要な子どものために延長保育を行うなど、保育所の機能を兼ね備えたタイプ。3歳未満児を担当する場合、保育士資格が必須となるが、3歳以上は保育士資格または幼稚園教諭免許のどちらか一方でもいい。
■保育所型
認可保育所の施設にて、保育を必要としない子どもも受け入れて幼児教育を行うなど、幼稚園の機能を兼ね備えたタイプ。3歳未満児を担当する場合、保育士資格が必須となるが、3歳以上は保育士資格または幼稚園教諭免許のどちらか一方でもいい。
■地方裁量型
幼稚園・保育所ともに認可のない地域において、教育・保育施設が認定こども園として必要な機能を果たすタイプ。3歳未満児を担当する場合、保育士資格が必須となるが、3歳以上は保育士資格または幼稚園教諭免許のどちらか一方でもいい。
認定区分
こども園に入所する際に保育認定が必要となります。市町村が保護者の必要に応じて保育やサービスの提供をしていくために、1号認定・2号認定・3号認定の3つの区分に分けられており、認定区分によって利用可能な保育時間や保育料が変わってきます。
1号の認定区分
子どもの年齢:満3歳~5歳
保育時間:4時間(延長保育や一時預かり保育の利用も可能)
保育料:国が定めた上限金額(月額)は0~25,700円
■利用手続き方法
認定こども園に直接受ける
認定こども園から入園の内定を受ける
園を通じて市町村に認定を申請する
園を通じて市町村から認定証が交付される
認定こども園と契約する
2号の認定区分
子どもの年齢:満3歳~5歳
保育時間:保育標準時間が11時間、保育短時間が8時間
保育料:国が定めた上限金額(月額)は保育標準時間が0円~101,000円、保育短時間は0円~99,400円
■利用手続き方法
3号の認定区分
子どもの年齢:0歳~3歳
保育時間:保育標準時間が11時間、保育短時間が8時間
保育料:国が定めた上限金額(月額)は保育標準時間が0円~104,000円、保育短時間は0円~102,400円
■利用手続き方法(2号認定と同様)
どれくらい認定こども園は増えているの?
保育園や幼稚園が「認定こども園」に移行するというケースは年々増え続けています。内閣府の調査によると、全国の認定こども園の数は平成30年に比べて約1,000件以上も増加。そのうちの60箇所は新規に開園した施設ですが、残りは保育園・幼稚園といった施設が認定こども園に移行したものです。
割合として最も多いのは『幼稚園型』、その次に『幼保連携型』『保育所型』『地方裁量型』の順となっています。
認定こども園に移行する理由
なぜ、こんなにも保育園が認定こども園に移行する流れになってきているのでしょうか。それには以下のような理由が考えられます。■幼稚園への転園を防ぐ
■1号認定児を確保することで収入も上がる
通常保育園では、子どもたちを保育することに重点を置き、幼児教育にはあまり力を注いでいません。そのため「小学校に向けて、必要な教育を受けさせたい」といった保護者の意向により、3歳児クラスに進級するタイミングで、子どもを幼稚園に転園させるケースも多くあります。保育園側としては、どのクラスも一定数の定員は確保したいところ。そこで、保育園を認定こども園に移行し幼児教育を行うことで、幼稚園への転園を防ぎます。また、認定こども園に移行することで1号認定児を受け入れることができます。1号認定児とは、保育を必要としない3歳以上の子どもを指します。1号認定児を受け入れることで、1号認定枠の定員を確保し保育園のときよりも園の収入が上がる傾向にあります。収入が上がれば、その分園の設備を充実させたり質の高い保育を行うことができるのです。 認定こども園で働くメリット
【メリット】
保育園ではできないイベントも体験できる
幼児教育について学べる
0歳~満5歳児まで長く子どもの成長を見られる
今まで保育士として働いていた人も幼稚園教諭の仕事を経験することで、教育に対する考え方を知ることができます。
認定こども園は保育士、幼稚園教諭どちらの仕事も経験することができるので、スキルアップには最適です。
認定こども園は幼稚園の特長を備えているので、普段保育園ではやらない野外活動や見学会、発表会などさまざまなイベント行事があります。
また子どもたちが3歳児クラスに進級するころには、幼児教育を目的に保育園から幼稚園に転園するといったケースが多くあります。
保育士としては、卒園を待たずして子どもたちが園を去ってしまうのは寂しいと感じでしまいますよね…。
しかし、認定こども園であれば教育の時間も設けているため、小学校にあがるまで子どもたちの成長を見続けられるというメリットがあります!
認定こども園で働くデメリット
【デメリット】
仕事量が増える
幼稚園教諭と考え方の相違
保育組、幼稚園組双方の子どもたちへ配慮が必要
先ほどメリットで話したように、イベント行事が増えるということは「仕事量が増える」ということです。
慣れないうちは、作業の多さに大変だと感じてしまうかと思いますが、抱えている仕事量と自分のキャパシティーを考慮しつつ、計画的に取り組むよう努めましょう。
また、よくいわれているのが『保育士と幼稚園教諭では考え方が違う』ということ。認定こども園では、子どもたちの日常生活を保育する保育士と、学びを施す幼稚園教諭が一緒の環境で仕事をするようになります。ときには考え方の違いで衝突する可能性もあるでしょう。
お互いに意見を取り入れられるように、定期的に話合いの場を設けるといいですね。
ほかにも、認定こども園に移行することで保育士が気を付けることは、保育組と幼稚園組双方の子どもたちの気持ちを汲み取り、配慮しなければならないことです。
例えば、幼稚園組は保育を必要としないため、通常どおり昼過ぎには降園してしまいます。
その際に、いまだ遊び続ける保育組を羨ましいと感じる子もいれば、自分よりも早く保護者と帰る幼稚園組の姿をみて寂しいと感じる子もいます。
そんな子どもたちの気持ちを汲み取り、保育士は双方の視点にたって、声掛けをしたり室内遊びを提案したりと配慮しなければなりません。
保育園と認定こども園の給料の違いは?
保育園と認定こども園で給与に変わりはあるかということですが、保育園の場合保育士の平均給与は約30万前後。たいして、認定こども園で働く保育教諭の月平均給与は約27万円前後となっており、保育園に比べると若干低い傾向にあります。(※1)。
しかし、その代わり認定こども園では指導保育教諭、主幹保育教諭とキャリアに合わせた役職が設定されており、役職を得ることができれば貰える給与の額もぐんと上げることが可能です。
認定こども園で働くのに必要な資格ってあるの?
認定こども園で働く際に、保育士さんにとって気になるところは「保育士の資格だけで働けるかどうか」ではないでしょうか。
結論からいうと、幼保連携型以外の認定こども園においては保育士資格のみでも働くことは可能です。しかしもし、働きたいと思った施設が幼保連携型の認定こども園だったとしたらどうでしょう。ほかにも保育士の資格のみで働いているうちに、自分の力量不足を感じてしまったら…。
そこで、保育士+幼稚園教諭どちらの資格も持つ「保育教諭」という職種を目指してみてはいかがでしょうか。
「保育教諭」って?
保育教諭とは、保育士資格と幼稚園教諭のどちらも取得した職員のことをいいます。とくに幼保連携型では両方の資格が必要となるため、職員も保育教諭に限定されます。
またどちらも兼ね備えた職員となるため、0歳~満5歳児までどのクラスも担当することが可能です。子どもたちを保育しながら、幼児教育をするスペシャリストとして認定こども園の増加とともに注目される職種となっています。
認定こども園で働くなら、円滑に業務を行うためにもぜひ保育教諭の資格はもっておくことをおすすめします。
しかし、「働きながらもう一度学校に通うのは時間がかかる…」とお困りの現役保育士さんもいらっしゃるのではないでしょうか。ご安心ください。実は、働きながらでも少ない単位で資格(免許)取得を目指せる嬉しい制度があるのです!
免許取得を目指すなら、幼保特例制度を活用しよう!
「幼保特例制度」とは、認定こども園法の改正により保育士と幼稚園教諭のふたつの資格を有する人材を確保するため、内閣府が新たに創設した制度のことをいいます。この制度を利用すれば、大学や専門学校で取らなければならない必修単位の数を減らすことができます。通常、幼稚園教諭の免許を最初から取得する場合、最低でも62単位以上が必要です。働きながら単位を修得するとなると、かなりの時間が必要ですよね…。しかし、幼保特例制度を活かせばどちらか一方の資格を持ち、3年かつ4,320時間(フルタイムで540日以上)の実務経験がある方に限り、通常よりも少ない8単位の修得で資格(免許)取得を目指せる
のです。単位は、指定の大学に通う方法のほかにも、インターネットで講義を受けられる通信講座もありますので働きながら幼稚園教諭免許の取得を目指せますよ。また、この特例制度は『経過措置期間』という期間が設けられており、以前は2019年までだったところ、内閣府の意向により期限を延長し2026年(令和6年末)までとなりました。ぜひこの経過措置期間を利用して、免許取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか? 増え続ける『認定こども園』に保育士ができることは
認定こども園は、待機児童の問題解消と共働き世帯のニーズに寄り添うことを目的に今後も増え続けていくのではと予想されています。現在保育園として機能している施設が、近い将来認定こども園に移行する日がくるかもしれません。環境の変化に対応できるように、保育士さんができることといえば“ 幼稚園教諭免許 ”を取得し保育教諭を目指すことではないでしょうか。子どもたちを保育しつつ、教育を施せる保育教諭になることは自身のスキルアップにもつながります。また、万が一転職することになったとしても保育教諭のスキルがあれば有利に転職活動を進めることが可能です。免許取得するには少し手間が必要ですが、特例制度をフルに活用し、新たな職種の『保育教諭』として保育士とはまた違った視点でよりよい保育人生を送ってみませんか?☆認定こども園に興味のある方は、▶保育士WORKERで求人を検索♪