保育士が退職を検討する際に“ 年度途中に辞めても大丈夫かどうか ”は、とても気になる部分ではないでしょうか。1年ごとに各クラスの担当を受け持ち、子どもたちを預かる責任のある仕事。季節ごとにイベント行事も控えており、辞める際にはタイミングがとても重要となってきます。そんな環境もあってか、保育士が年度途中に辞めることはタブーとされる傾向にあります。なぜ、保育士は年度途中に辞めることが許されないのでしょうか。まずはその理由について解説していきます。
保育士が年度途中で辞められない理由
年度末を待たずして退職することは、保育士業界のなかでご法度とされています。
実際に、周囲の保育士から批判を受けたり、上司に退職を認めてもらえないなんてことも少なくありません。なぜ、ここまで年度途中の退職が許されないのか、それは保育園の体制に問題があるのです。
■担任制度
新人からベテラン保育士までどの保育士にも担当するクラスがあります。子どもたちの年齢や定員によって、配置される保育士の数は異なりますが、基本的にはひとクラスを複数の保育士が受け持ちます。園によっては、定められたギリギリの人数で保育士を配置していることもあり、もし誰かが年度途中で辞めてしまうとなると、園側は急ぎ後任の保育士を配置しなければなりません。適任者が見つからない場合、外部から人を探さなければならないため、園側は極力年度途中の退職を避ける傾向にあるようです。
■雇用契約
一部の保育園では、入職時に交わされる雇用契約に基づき、年度途中の退職を禁止しているところがあります。理由は、新たに人を雇うことになった際に求人にかかる費用が発生してしまうからです。保育士が辞めてしまうたびに、時間もお金もかかってしまうのは園としても避けたいのでしょう。しかし、契約書に書いてあるからと必ずしも辞められないというわけではありません。たとえ雇用契約書に記載されていたとしても、民法上の権利を行使することができるのです。
パートやアルバイトなどの非常勤職員の場合は、退職を希望する日から数えて2週間前に申し出れば問題ありません。また月給制の常勤職員の場合ですと、その月の前半に申し出れば当月末に、月の後半であれば翌月末に退職することが可能となります。
■退職後の心配や不安
「子どもたちが寂しがるかもしれない…」「ほかの保育士に迷惑をかけてしまうかもしれない…」と、周りに迷惑をかけてしまうのではという責任感から辞められない方は意外と多いです。
しかし、安心してください。結論からいえば、あなたが辞めてもなんら問題はありません。子どもたちは、最初こそ寂しい思いをするかもしれません。しかし、それもほかの先生やお友達と楽しい日々を過ごしていくうちに次第に薄れていきます。そもそも、進級のタイミングで担当の保育士は入れ変わりますし、先生がいなくなることは決して珍しいことではありません。あなたが辞めたあと、新たに保育士が配置され、通常どおり保育業務は行われていきます。
ちょっとまって!年度途中に辞めない方がいい場合
職場の人間関係や仕事でのトラブル、結婚や妊娠など、人によって辞めたい理由は異なります。しかしなかには、辞めなくてもいい場合があります。例えば、・いつまでたっても仕事が覚えられない
・子どもが言うことを聞いてくれない
・ピアノの練習や日案、月案を考えるのがしんどくなってきた
などとくに経験の浅い新人保育士に、このような理由が多くみられます。仕事が覚えられない、子どもに慣れないというのはおもに“経験不足”が原因。誰しも最初は慣れない作業に、苦労や失敗をすることもあるでしょう。しかし、保育士は経験とともに自信ややりがいの出てくる仕事です。まずは、失敗を恐れずなんでも繰り返しやることから徹底しましょう。苦手な作業も繰り返しやるうちに失敗の回数も減り自分に自信がついてきます。ほかにも、わからないことがあれば先輩保育士にアドバイスを聞く、覚えられないことはメモに書きとめるなど、工夫次第で解決できる悩みもあります。できないからと退職を決めてしまう前に、やれることはすべてやってみてからでも遅くはありませんよ。 年度途中に退職するとどんな影響がある?
年度途中に辞めることで、なにか保育士に影響はあるのでしょうか。
【デメリット】
・子どもたちの卒園や進級を見届けられない
・希望の転職先が見つかるかわからない
・転職先に“ 年度途中で辞めた人 ”と見られる
・無責任、子どもたちがかわいそうといった周囲の目
年度途中に退職すると、担当する子どもたちの卒園、進級は見届けることができません。また退職する時期によっては、希望の条件に合った保育園を見つけられない可能性もありますし、転職の際に「年度途中に辞めた人」といったイメージを面接官に持たれてしまいます。
ほかにも、退職の意思を伝えたあと期間を設けずにすぐ辞めてしまった人や、辞め方に問題のある人は周囲の保育士から“無責任”といった印象を持たれてしまい、今後の転職活動にも大きく影響が出てきてしまいます。
保育園は職員同士の繋がりが深く、前職での悪い噂は人を伝って新しい職場にも広まる恐れがあるので、辞める方法については注意が必要です。
このようにさまざまなデメリットはありますが、退職希望を伝える時期や伝え方に注意すれば問題なく年度途中に辞めることができます。次に、その辞め方について話します。
年度途中で転職するための手順
年度途中の退職は年度末の時期と比べて、円満に辞められないなどの問題が出てきてしまう恐れがあります。それらを防ぐためには、退職をいつ誰に、どのように伝えたらいいのかが重要です。ではまず、退職を伝えるベストなタイミングについて把握しておきましょう。
退職を伝える時期はいつがいいの?
保育園では、退職を伝えるには適した時期というものがあります。年間を通して、さまざまなイベントが行われるなか、比較的6月、8月、12月ごろ
は大きな行事も少ないため狙うならこの時期がおすすめです。・6月…4月に新年度がスタートして2か月が経ち、業務に少し落ち着きがみられだす時期です。夏に向けてイベントの計画が少しずつ始まりますが、まだこの段階では上司や同僚も業務にゆとりがあります。・8月…一見、夏のイベントで忙しく感じる季節ですが、ほかの月と比べると比較的落ち着いている時期です。また、夏季休暇もあり職員は交代で休みを取るなど、業務にゆとりも見られます。運動会の準備をするには、まだ少し早いですね。・12月…年内の行事がすべて終わり、キリがいい時期でもあります。なかには仕事納めとして上司に退職を相談する人や冬のボーナスを受け取ったあとに「辞めたい」と伝える人も少なくありません。それ以外の4~5月、9~11月ごろですが、新年度がスタートしたり新人保育士の指導があったりと、大きな行事がいくつも重なる時期です。そのため、周囲の保育士は業務に追われて満足に引き継ぎができない可能性があり、また退職を伝えたとしても「時期が悪いので、一旦この話は保留にしてほしい」と退職を引き延ばされるケースも少なくありません。もし年度途中に辞めたいとお考えの方は、タイミングを考慮して伝えてみてください。 退職理由の伝え方
退職の意思は、どう伝えるかがとても重要になってきます。いつ、誰に、何を、どう伝えるのかをしっかり把握しておきましょう。
■最低2週間~1か月前に伝える
退職の意思は、遅くても2週間前に伝えましょう。
ただし、園によっては社内規定に基づき1か月以上前に申し出るよう決められている場合があります。入職した際に交わした雇用契約書または社内規定を一度確認してみてください。少しでも円満退職を目指すなら、引き継ぎを考慮して辞めるまでの期間に余裕をもたせるといいですね。■直属の上司、または園長に直接伝える
退職したい旨は、担当するクラス主任もしくは園長に直接伝えます。最近では、直接伝えづらいからと、メールや電話で報告するケースも少なくありません。人によっては職場での人間関係を理由に退職するため、直接伝えづらいと感じる方もいらっしゃるかと思います。直接会わずに辞められたらそれに越したことはないのですが、今までお世話になった保育園に退職の意思を伝えることは社会人として最低限のマナーです。
次のステップに気持ちよく進むためにも、今一度勇気を出して伝えてみましょう。
■退職理由は具体的に伝えない
退職の意思を伝えたら、ほぼ間違いなく理由を聞かれることでしょう。退職理由は人それぞれだと思いますが、それを正直に答える必要はありません。
むしろ本音を話すことによって「善処します。なので辞めないでください」と引き止められる可能性があります。もし言いにくいなと感じたら、あえて別の理由を挙げてみるといいでしょう。例えば、身内の不幸、親の介護による引っ越し、夫の転勤など、やむを得ない事情であれば園側も無理に引き止めることはできません。 後任の保育士への引き継ぎ
退職理由の伝え方でもお話したように、最低でも2週間から1か月以上は引き継ぎの期間を設けましょう。引き継ぎの内容は、担当するクラスの状況、子どもたちの様子や家庭環境など、詳細に伝える必要があります。ほかにも自分が今抱えている仕事が期間内に終わらないものであれば、引き継ぎをお願いしなければなりません。
より円滑に業務を引き継げるように、あらかじめノートに書いてまとめておくと安心ですね。
保護者、子どもたちへの伝え方
年度途中に辞めるとなると、何らかの形で子どもたちや保護者に挨拶をしなければなりません。おたよりに一言書く場合もあれば、時間を設けて直接挨拶をする場合もあります。退職をいつどのように伝えるのか、上司または園長と相談して決めましょう。
保護者には日頃の感謝と年度途中で退職してしまうことの謝罪の気持ちを伝えます。理由を聞かれることもあるかと思いますが、ここでも正直に伝える必要はありません。
一方、子どもたちには「ほかの園にお引越しすることになった」「先生は、今日で保育園をバイバイします」など、月齢に合わせてなるべく柔らかい表現で伝えてあげるとわかりやすいです。またさようならの言葉より、子どもたちを思いっきり褒めてあげてください。そうすることで子どもたちの寂しさを和らげることができますよ。
年度途中の転職が不安な方は…
年度途中の退職を検討する際に、悩まれるのは転職するかどうかではないでしょうか。
転職する場合、求人雑誌や求人サイトから探してみるものの、年度途中に募集する求人にも限りがあるし、そもそも転職していいものかどうか判断できないという方もいらっしゃるかと思います。
そんな方は、転職サイトに相談するのがおすすめです。
保育職に特化した専門のアドバイザーが、あなたの悩みを解決し理想の転職先を見つける手助けをしてくれます。例えば、転職を考えているがいい求人が見つからないといった場合、求人サイトにもまだ掲載されていない高待遇求人をいち早く紹介することが可能です。また、気になる求人はあるけれど条件が合わないといった際に、アドバイザーが直接園と交渉してくれます。
自分の置かれている状況が転職するにいたるかどうか、判断にお困りの方も気軽に相談してみましょう。アドバイザーが今の状況を伺い、転職した方がいいかどうかを的確にアドバイスしてくれます。お悩みの相談から転職のサポート、入職後のアフターフォローまで丁寧に対応してくれるので転職が初めての方でも安心ですね。
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「辞めることで誰かが困るかもしれない」「誰かが寂しい思いをするかもしれない」といった心配は、人一倍責任感が強く人の気持ちがわかる保育士だからこそ躊躇してしまう部分なのかもしれません。
しかし、たとえあなたが抜けても業務は滞りなくまわっていきますし、子どもたちも普段通り楽しく保育園に通い続けます。大切なのは「環境が変わっても、好きな仕事をいつまでも続けられる」ということ。安心して新しい一歩を踏み出してみませんか?
晴々とした気持ちで、第2、第3の保育士人生を素晴らしいものにしてくださいね。