子どもはリズムに合わせて身体を動かすことが大好き。
リズムに合わせて自由に身体表現をするリトミックは、多くの幼稚園、保育園で取り入れられています。
しかし、リトミックは保育や幼児教育の資格取得の際の必修科目ではなく、詳しいことはよく知らないまま保育現場に出たという方は多いのではないのでしょうか。
今回は、リトミックのねらいや準備、指導の工夫など、リトミックの基本についてご紹介していきます!
リトミックとは?
リトミックは、1.音楽を聴く
2.理解し判断する
3.表現する
という3つの要素から成り立ちます。リトミックの動きに正解はなく、音楽やリズムを聴き、それを身体全体で自由に表現して楽しむことが基本です。リトミックの起源は19世紀末。スイスの音楽家エミール・ジャック・ダルクローズが確立した音楽教育法です。日本では明治時代から音楽教育法として取り入れられてきました。 リトミックのねらい
●全身で音楽を感じ、リズムに合わせて体を動かす楽しさを味わう。
●音楽やリズムに触れ、想像を膨らませることで感性を養う。
音楽をよく聴き、音楽に反応して身体表現することで、集中力、思考力、表現力を育みます。お遊戯やダンスとの違いと効果
同じように音楽を使うリズム遊びにはお遊戯やダンスがありますが、これらとリトミックにはどのような違いがあるのでしょうか?
お遊戯やダンスは決められた動きを覚えて再現します。一方、リトミックは、音楽を聴いて自分が感じたものを自由に身体で表現します。どちらも音楽に合わせて体を動かすリズム遊びですが、お遊戯やダンスとリトミックでは目的の異なったリズム遊びであることが分かります。また、リトミックを経験することで次のような力が育まれます。●音に親しむことで、リズム感、音の強弱や高低を聴き分ける力
●身体を使って表現することで、集中力、創造力
集中し、即座に体現することに慣れることで、「判断する力」「実現する力」といった人間が生きていく上で大切な能力の習得にも繋がります。
リトミック指導の準備
次に、リトミック指導の準備について見ていきましょう。
1.楽器を選ぶ・曲を決める
まずは、リトミックに欠かせない音楽です。
用意したものをCDなどで流してもいいですが、できればピアノなどを使ってその場で演奏するのが理想的です。
子どもたちの反応に合わせて対応できるので、より表現の幅を広げることができます。
楽器は、ピアノやオルガン、ギターなど演奏しやすいものを選びましょう。
使用する曲は、明るい音楽、悲しい音楽、ゆっくりとした音楽など、テーマに沿ったものを選びます。
子ども達に馴染みのある曲を選ぶのもいいでしょう。ただし、子ども達に振付のイメージがあるものは自由な発想が生まれにくいので注意が必要です。
2.曲のアレンジを考える
リトミックの音楽演奏では、「ゆっくり・普通・速い」の3つのテンポを上手く使い分けます。初めのうちはリズムよく演奏し、テンポに合わせて歩いたり走ったりするところから始めましょう。慣れてきたら、更にイメージを加えて、「楽しい」「静かに」「恐い」など、演奏をアレンジします。また、いくつかの曲を組み合わせてストーリ仕立てにする方法もあります。例えば、元気よく歩く→お空を飛ぶ→着地
という流れにしたい場合、これに当てはまるような音楽は、テンポの良いリズム→ゆったりとしたリズム→切れの良い音
となります。子ども達が聴いて、自然と動きをイメージできるように曲を選び、演奏のアレンジを考えてみましょう。 3.「声掛け」を決める
リトミック指導には演奏に加えて「声掛け」が必要となります。2人で行う場合は、音楽に合わせて声をかけるという連携が必要となるので、事前に練習しておくようにしましょう。もちろん一人で演奏しながら行っても大丈夫です。保育者の声掛けは、音楽の変化と合わせて動きを想像するきっかけ
となります。例えば、「雨が降ってきたよ!」「お空を飛んでみよう」など。具体的な動きを示すものではなく、イメージを膨らませやすい声をかける
ようにしましょう。ストーリーを投げかけるような言葉を準備するのがポイントです。 いよいよ実践!慣れてきたら発展させてみよう
リトミックは自由表現。もちろん子ども達は事前の準備どおりには動きません。目の前の子ども達の様子を見て、状況に合わせて柔軟に対応するようにしましょう。準備したストーリーを主軸にしつつ、子ども達が作り出したイメージを取り入れながら
進めていきます。 タイミングを見てアレンジ
子ども達がリトミックに慣れて楽しめるようになってきたら、内容にアレンジを加えます。
集中した状態で新しいことを取り入れると、子ども達は興味津々!ぐんぐん吸収します。
活動を発展させるタイミングは、全体の8割程度ができている状態が目安です。子ども達の様子をよく見て、タイミングを逃さず次のステップに進んでいきましょう。
「合図の音」を取り入れる
リトミックは、子どもが音楽になれるように同じ音楽で繰り返し行なうのがポイントですが、毎回同じ曲だと、子どもたちは飽きてしまいます。そこで、「この音が聴こえたら反対回りに歩こう」など、合図となる音を作り、動きのバリエーションが広がるようにします。
動きの種類は、スキップ、速足、ハイハイなど、子どもの発達に合わせて無理のないように選びましょう。 楽器・布やボールなどのアイテムを追加!
リトミックは道具を用いて行うこともできます。音楽に合わせて楽器を鳴らす、表現の中で布やボールを使うなど、道具を取り入れることでより表現の幅を広げることができます。
成長段階に合わせたリトミック
リトミックをより楽しくスムーズに行うためには、子どもの成長段階に合わせた内容設定が大切です。乳児、幼児それぞれの発達に合わせたポイントを見てみましょう。
乳児期のリトミック
リトミックは0歳児から始めることができます。
保育者が援助して、音楽やリズムに合わせて体を動かす楽しみを味わえるようにしましょう。
1歳ごろになると、自分で音に合わせて手を叩く、ジャンプ、体を揺らす、といった表現ができるようになります。
2歳ごろでは、「大きな象さんのように」など知っている生き物を想像して、イメージを持って身体を動かせるようになります。
幼児期のリトミック
会話やお友達との関わりが増え、グループでの表現ができるようになります。お友だち手を繋ぎ、電車になりきって音楽に合わせて止まったり、スピードを上げて走ったりといった楽しみ方もできます。
また、保育者の声掛けにより、更に想像を広げてストーリーに沿った表現をすることができます。
たとえば、「何の音かな?」とピアノ音をよく聴かせた後、「雨が降ってきたよ!」と声を掛けます。すると、傘を広げる、水たまりをバシャバシャ踏むような動きをするなど、声と音楽から想像を膨らませて、新たな表現を見せてくれるようになります。
注意したいこと
大切なのは、「音楽に合わせて動くと楽しい!」という経験をさせてあげること。
子どもが笑顔で楽しめるよう、初めのうちはうまくいかなくても、焦らずにゆっくりと見守るようにしましょう。また、リトミックに正解はなくみんなが同じである必要はありません。こうでなければならない、という考えは持たず、自由な表現を尊重しましょう。自己が生み出した自由な表現を認められることにより、子どもの自己肯定感の形成にも繋がります。楽しんでリトミックを取り入れよう
リトミックにはリズム感や音感だけでなく、想像力や判断力などさまざまな子どもの能力を引き出す効果があります。
保育者が楽しみながら進んで表現することで、子どもは楽しさを共有し始めます。
そのためには「教える」のではなく、子どもの自由な自己表現を受け入れる雰囲気作りが大切です。ぜひ先生自身も楽しみながら、リトミックを保育に取り入れてみてくださいね。