訪問保育とは、依頼者の自宅に出向いて保育をおこなうサービスのことです。なんらかの事情により、保育園に通えないなど家庭に保育を提供します。
保育園やこども園などの勤務とは異なる環境ですが、家庭的な保育を提供するやりがいのある仕事です。そのため、訪問保育に興味のある人も多いのではないでしょうか?
この記事では、訪問保育の概要や働くメリット・デメリットをご紹介します。合わせて、ベビーシッターやチャイルドマインダーとの違いも解説しますので参考にしてください。
訪問保育とは?居宅訪問型保育事業の概要
訪問保育とは、居宅訪問型保育とも呼ばれる家庭でおこなう保育サービスのことです。
子どもが待機児童となり、社会復帰できない保護者などの支援として始まった子育て支援制度です。
ここからは、訪問保育の概要やそのほかのサービスとの違いを紹介します。
地域型保育事業のひとつ
子育て支援の一巻として展開されている保育の場は、以下の4つです。
幼稚園(3~5歳)
認定こども園(0~5歳)
保育園(0~5歳)
地域型保育(0~2歳)
訪問保育は上記のうち、地域型保育事業に当てはまります。地域型保育には、家庭的保育、小規模保育、事業内保育、居宅訪問型保育の4つがあり、訪問保育は0~2歳児の少人数保育をおこなうサービスとして位置づけられています。参考:内閣府「子ども・子育て支援新制度 すくすくジャパン」 訪問保育の利用条件
訪問保育は、主に待機児童になり保育園に通えない、または集団での保育に不安を感じるなどの理由により家庭での保育を希望する人が対象です。
保護者が仕事で外出している時間、1対1のでの保育サービスが基本となります。
近年では、テレワークの普及により在宅勤務中の利用需要も高くなっています。
仕事部屋と分けることで訪問保育の利用が可能となるケースもあり、多忙な保護者にとても便利なサービスです。
チャイルドマインダーやベビーシッターとの違い
依頼者の自宅で保育する訪問保育は、チャイルドマインダーやベビーシッターと同じように感じる人も多いのではないでしょうか?しかし、それぞれ以下のような違いがあります。
| 資格 | 保育対象 | 保育する場所 |
訪問保育 | ・保育士、保育士と同等以上の知識や経験がある人 ・必要な研修を修了した人 | ・0~2歳児 (1人) | ・依頼者宅 |
チャイルドマインダー | ・チャイルドマインダー (民間資格) | ・0~12歳 (1~4人) | ・依頼者宅 ・保育者宅 |
ベビーシッター | ・無資格でも可 ・ベビーシッター資格 (民間資格) | ・0~12歳 (2~3人) | ・依頼宅
・外出先 ・公園など |
参考:内閣府「地域型保育事業の概要」
参考:英国チャイルドマインダー養成NCMA,Japan
参考:KIDSLINE訪問保育は、就労などにより保護者が不在の時間帯のみ保育サービスをおこないます。しかし、ベビーシッターは、保護者が在宅中でも利用可能です。家事をしている時間はもちろん、リフレッシュのための外出にも対応します。それぞれ対象年齢にも大きな違いがあり、訪問保育は「乳児期の子どもをゆっくりお世話したい」と考える人にピッタリの働き方といえるでしょう。なお、地域や利用するマッチングサービスによって病児保育対応の有無や保育場所のルールは異なりますので注意してください。 訪問保育の仕事内容
訪問保育の仕事内容は、基本的に保育園で働く保育士の仕事と大きな違いはありません。
訪問保育の1日の流れは以下のとおりです。
依頼された保育時間10分前に自宅到着
身支度を整えて体調など引継ぎを受ける
子どもと1対1での保育を開始する
室内遊びや公園遊びなどにより午前中を過ごす
保護者が準備した昼食を食べてお昼寝を促す
書類記入や呼吸チェックをおこなう
起床後おやつを食べて室内遊びや公園遊びをおこなう
保護者帰宅後に1日の引継ぎを済ませる
保育園での保育を、依頼者の自宅にておこなうイメージです。
訪問保育では保育が基本のため、家事や買い物などの雑務は引き受けません。
訪問保育で働くメリット
訪問保育は、通常の保育園とは異なり、2歳児までの子どもを1対1で保育します。
ゆったりとした環境で保育が可能なため、働いてみたいと考える人も多いのではないでしょうか?訪問保育で働こうと考えている人は、どのようなメリットがあるか確認しておきましょう。
子どもとじっくり向き合える
訪問保育は子どもと1対1で関わるため、じっくりと向き合う保育が叶います。
通常の保育園では、クラス運営に気を取られて個々の成長にゆっくり気を配れません。
しかし、訪問保育であれば特定の子どもを丁寧に保育できるため、子育てをサポートしている実感が得られます。
個々のペースで保育を進められる
「子どもと関わる仕事がしたい」と思っていても、ピアノや運動などどうしても苦手な項目がある人も少なくないでしょう。
訪問保育では、個々のペースで保育を進められるため、苦手なことがあっても安心です。
「保育園での勤務経験がない」という人でも、居宅訪問型保育基礎研修により幅広い知識を得られるため、不安なく保育を進められるでしょう。
保護者から感謝される
通常の保育園では、関わる保護者の人数が多く対応がとても大変です。なかには理不尽な要求があり、うまくコミュニケーションを取れないことも。
しかし、訪問保育であれば家庭とじっくり向き合えます。保護者からの感謝の気持ちも伝わりやすく、役に立っていると実感できるでしょう。
訪問保育で働くデメリット
ゆっくり子どもと向き合える訪問保育はとても魅力的ですよね。
しかし、1対1での関わりには以下のようなデメリットもあります。
子どもや保護者との信頼関係が必要
初めて訪問保育を利用される家庭に出向くとき、子どもが大泣きする可能性があります。
子どもが慣れている環境で保育できるとはいえ、負担がないわけではありません。
保護者もまた、どのように保育してもらえるのか、不安を感じることでしょう。親子ともに安心して過ごしてもらえるよう、信頼関係の構築がとても大切です。
ケガや事故の不安が大きい
通常の保育園であれば、なにかトラブルがあってもチームで解決できます。
とくにケガや事故の場合は主任保育士や園長先生、看護師などとの連携が欠かせません。
しかし、訪問保育は1対1での保育のため、万が一の対応を1人でおこなう必要があります。
ケガや事故のリスクは少ないと考えられますが、十分な配慮が求められます。
大きな行事がなくメリハリをつけにくい
訪問保育の対象は乳児のため、集団生活が求められるわけではありません。
しかし、お友達と一緒に行事を楽しむ習慣がないため、保育する側としてもメリハリをつけにくい可能性があります。
公園や児童館への行き来や自宅での製作ばかりでは、退屈に感じることがあるかもしれません。
訪問保育に必要な資格やスキル
訪問保育をおこなうためには、以下のような資格やスキルが必要です。
訪問保育に携わりたい人は、しっかりチェックしておきましょう。
保育士資格または同等な知識や経験
訪問保育は、市町村や民間事業者などが事業主体となり運営されています。
職員資格の基準は、必要な研修を修了した「保育士資格または保育士と同等以上の知識および経験を有すると市町村長が認める者」です。
居宅訪問型保育基礎研修などの受講
ケガや事故などトラブルへの対応力
子どもは急に転んでケガをしたり、食事中に喉を詰まらせたりします。
たとえ1対1で保育をしていても、トラブルを完全に回避するのは不可能といえます。
そのため、ケガや事故などのトラブルへの対応力が求められます。応急手当や心肺蘇生法など、万が一の知識や行動力も欠かせず、責任感のある対応スキルが必要です。
まとめ
訪問保育とは、地域型保育事業のひとつで市町村や民間事業者などが事業主体となり運営しています。
主に0~2歳児の子どもを、依頼者の自宅にて保育します。
通常の保育園での過ごし方と大差ありませんが、1対1でゆっくり関われるため手厚い保育が可能です。
訪問保育をおこなうには、保育士資格の有無に関係なく「居宅訪問型保育基礎研修」の受講が必要です。
訪問保育は「自分のペースで保育を進めたい」「子どもとじっくり関わりたい」という人におすすめの働き方といえるでしょう。