試し行動とは、子どもが大人の気持ちを探る行動を指します。わざと悪いことをしたり、叱られても繰り返したりして、どこまで許してもらえるのか反応をうかがいます。そのような行動に、どう対応したら良いか分からない人も多いのではないでしょうか?
この記事では、試し行動の特徴や原因などを詳しく解説します。また、試し行動への対応ポイントもご紹介しますので参考にしてください。
子どもの試し行動とは?
子どもの試し行動とは、愛情を確認するための行為といわれています。悪いと分かっていながら「どこまでなら許してもらえるのか?」「自分のことを本当に愛してくれているのか?」
と、大人の反応を確認する行動です。 代表的な試し行動
● わざと物を投げて注意されてもやめない
● わざと飲み物や食べ物をこぼす
● わざと大人が見ている前で物を壊す
● 大人の反応を見ながらお友達や兄弟をたたく
● 「イヤ」「しない」を繰り返して大人の話を受け入れない
● あまのじゃくな態度をとる
上記のような行動を繰り返されると、対応している大人は「聞き分けの悪い子」「子育てを間違えた」などと感じて、うんざりすることもあるでしょう。しかし、試し行動は大人の愛情を確かめられるまで続きます。
乳幼児期だけでなく、小学生、中学生、高校生などの思春期、さらには大人になっても起こりうることです。相手の反応をうかがうために、大人同士で嫌がらせのような行動を取るケースも少なくありません。
試し行動の見分け方
一見すると単なる反抗期と見分けがつきにくいものですが、試し行動には以下のような2つの特徴があります。
● 悪いと分かっていながらわざとする
● 気を引くように顔色をうかがう
反抗期は、自我の芽生えや大人に認められたいという欲求からくる自己主張により起こります。そのため、試し行動と一般的な反抗期には、心理面での違いがあるといえるでしょう。
子どもが試し行動をおこなう要因
子どもが試し行動をおこなう要因には、さまざまなものがあります。保育士は、試し行動をひとくくりに「愛情不足」と指摘せず、試し行動の背景を理解すること
が求められます。ここからは、乳幼児にみられる試し行動の主な要因を解説します。 赤ちゃん返りによる試し行動
「ママが妊娠した」「妹や弟が産まれた」などの環境の変化は、子どもにとって大きな問題です。どれだけ意識していても、上の子は今まで自分だけに向けられていた愛情が減少したように感じてしまうでしょう。手をかけられている赤ちゃんを羨ましく思い、赤ちゃん返りする可能性もあります。「自分で食べられないから食べさせて」「歩けないから抱っこして」などと甘えるのは、一種の試し行動といえます。「赤ちゃんと同じくらい大切にしてくれるよね?」「赤ちゃんだけじゃなくてこっちも見てほしい」という、不安な気持ちが試し行動として表れることがある
と覚えておきましょう。 イヤイヤ期による試し行動
イヤイヤ期とは、自我の芽生えによって自己主張が強くなる時期を指します。主に、2歳前後の子どもに多く、自分の気持ちを言葉にできないため「イヤイヤ!」と癇癪を起こすことから、イヤイヤ期と呼ばれるようになりました。
「自分でやってみたいのにうまくできない」「自分で決めたいのに伝えられない」などの葛藤から、物を投げたり壊したりすることもあります。この時点では、試し行動とは心理的な違いがあります。
しかし、何度も繰り返し叱られ続けるうちに「ママに嫌われているかもしれない」と、不安な気持ちから、愛情をはかるような試し行動につながることも少なくありません。とくに、感情的に怒ったあとに気持ちを確かめるような行動をとることがあります。
愛情不足や愛着障害による試し行動
試し行動は、児童養護施設や里親の元で育つ子どもに多く見られるといわれています。愛情不足や愛着障害がある場合は、自分の居場所を確認するために試し行動をおこないます。
ひどい試し行動を目の当たりにすると「家庭環境に問題がある?」「育て方が間違っている?」など、不安に思うでしょう。
しかし、すべての行動が愛情不足からくるとは限りません。信頼関係を築きたいと思っている可能性もあるため、なんでも家庭の問題に結びつけてしまわないよう注意が必要です。
子どもの試し行動に込められたねらい
子どもの試し行動には「愛されたい」「注目してほしい」など、心理的な欲求が込められています。また、初めて関わる人に対して「どんな人かな?」「受け止めてくれるかな?」と、興味を持って反応を試すこともあります。このねらいを理解せず、叱り続けたり、存在を拒否するような態度を取ったりすると試し行動の連鎖が止まらなくなります。子どもが何を求めているのか、試し行動の内容やタイミングからねらいを想像
して、しっかり向き合ってあげたいですね。 無視しても良い?試し行動への対応ポイント
繰り返される試し行動に、何度も対応するのはとても大変なことです。ときには大人が挑発に乗ってしまい、悪循環になることもあるでしょう。
しかし、無視するだけでは「愛情を確かめたい」「注目してもらいたい」という子どもの欲求を満たせず、試し行動の根本的な解決になりません。ここからは、試し行動への対応ポイントを分かりやすくご紹介しますので参考にしてください。
過度に反応しない
試し行動を無視すると「ダメなことをしても叱られない」と、善悪の区別がつかなくなる可能性があります。もっと注目してもらいたいとの思いから試し行動が悪化することも考えられます。しかし、悪いことをしたときだけ関わると「嫌がらせすると注目してもらえる」と、間違った解釈が起こることも。
試し行動には過度に反応せず、ゆっくり子どもと向き合う時間を確保するよう意識してみましょう。 気持ちを受け止める
子どもが満足する愛情の量は一定ではなく、ほかの子どもと比べることはできません。そのため、大変ですが子どもが満足するまで気持ちを受け止めてあげることが大切です。
繰り返される試し行動にイライラしたり、可愛くないと思ったりするのは仕方のないことです。保護者だけ、保育士だけで抱え込まず、周囲の大人が協力して子どもの気持ちを受け止めてあげたいですね。
対応に一貫性を持つ
気持ちを受け止めることは、試し行動を容認するということではありません。物を壊したり、お友達や兄弟を傷つけたりするような行為は一貫性を持って叱る必要があります。
とはいえ「叱る」と聞くと、愛情不足から試し行動が繰り返されると心配になるかもしれません。しかし、ダメなものはダメと言えることも愛情のひとつです。問題なのは、大人の機嫌によって注意されるポイントが異なることです。
してはいけないことへの対応をハッキリさせながら、「どんなあなたでも大好き」と伝え続けてあげましょう。
突き放さない
ひどい試し行動が繰り返されると、ときに感情的になることもあるでしょう。しかし、突き放すような態度を取り続けると、試し行動を悪化させてしまう恐れがあります。
● 悪いことも良いことも無視する
● 「そんな子は嫌い」と言う
● 怒った態度を続ける
● 背中を向けて置いていこうとする
子どもの試し行動に挑発されて「もう知らない」「早く辞めないと置いていくよ」などと脅すような態度を取ると、子どもの自己肯定感に悪い影響を与えます。感情的になりそうなときは、一呼吸おいてから対応するよう心がけましょう。
まとめ
大人の気持ちや反応を確認する試し行動。悪いと分かっていながらわざと繰り返されると、対応する大人もイライラしてしまいますよね。試し行動は、家庭だけでなく保育園でも見られます。そんなとき、保育士が「発達障害があるのでは?」「家庭環境が悪く愛情不足になっているのでは?」など、原因を決めつけるのは控えましょう。子どもが求めているものが何か、よく観察して理解してあげることが大切です。
子どもの心が愛情でいっぱいになるよう、保護者と協力して対応してあげたいですね。