保育園でおこなわれるお泊まり保育は、年長クラス対象のイベントです。
保育士は、子どもや保護者が安心してお泊まり保育に参加できるよう、入念な準備をおこなう必要があります。
この記事では、お泊まり保育のねらいやタイムスケジュール、事前に準備すべき内容を解説します。
また、お泊まり保育で楽しむ活動や遊びのアイディアも紹介しますので参考にしてください。
お泊まり保育とは?
お泊まり保育とは、年長クラスの子ども達が家族と離れてお泊まりをする大きなイベントです。
年長クラスの子ども達と担任のほか、補助として複数の保育士や栄養士が参加します。
主に6~8月頃におこなわれることが多く、1泊2日が基本です。
とはいえ、実際は夕方から翌朝までの保育を基本として、子ども達の負担にならないよう配慮されます。
お泊まり保育は、保育園内で実施するケースが多く、いつも遊んでいるホールでのお泊まりに子ども達はワクワクドキドキします。
保育園によっては、近隣の合宿施設を利用することもあり、その場合は大型バスなどでの引率が必要です。
お泊まり保育のねらいや目的
お泊まり保育は、クラスの子ども達や保育士と楽しい思い出を作るためにおこなわれます。そのほか、以下のようなねらいが含まれています。・外泊により自立心を養う
・規則正しい生活習慣を身につける
・集団生活による協調性を育てる
・食事やイベントを通して社会性を養う
「ひとりでお泊りできた」「自分でできた」などの経験は、子ども達の成長に大きな影響を与えます。お泊まり保育は、日常とは異なる環境から刺激を受ける良い機会となるでしょう。 お泊まり保育当日のタイムスケジュール
お泊まり保育は、子ども達や保護者が不安にならないよう、綿密な計画を立てて実施します。保育園によって集合時間や解散時間、活動内容はさまざまです。ここからは、タイムスケジュールの一例をご紹介します。(例)お泊まり保育1日目のタイムスケジュール
15:00 登園/健康チェック/荷物確認/点呼15:20 開会式/園長先生の挨拶15:30 おやつ/園庭遊び/自由遊び16:30 夕食準備/クッキング体験18:00 夜ご飯/歯磨き19:00 夜のイベント20:00 お風呂/着替え/布団準備21:00 就寝(例)お泊まり保育2日目のタイムスケジュール
6:30 起床/洗顔/着替え/荷物整理7:00 健康チェック/点呼/体操7:30 朝ご飯/歯磨き8:30 朝のお散歩9:30 閉会式/園長先生の挨拶10:00 お迎え/引継ぎお泊まり保育前や解散後の通常保育は、子ども達の負担になるためおこないません。保育園によって、1日目はお昼前から集合したり、2日目はお昼過ぎに解散したりなどスケジュールはさまざまです。 お泊まり保育の事前準備
お泊まり保育を滞りなく開催する、事前準備は入念におこないます。主な準備過程は以下のとおりです。・日程と時間配分の検討
・役割分担と活動内容の決定
・保護者への周知
・子ども達への導入
ここからは、それぞれの準備内容を具体的に解説します。 日程や時間配分を検討する
年度末の職員会議にて、お泊まり保育の日程を話し合います。
保育園外の施設や大型バスを利用する場合は、早めの予約が必要です。
また、開催日2ヵ月前にはタイムスケジュールの検討もおこないましょう。
前年度と同じスケジュールでも問題ありませんが、過去3年分のお泊まり保育の記録や反省を参考に、時間配分を調整します。
役割分担や活動内容を決める
タイムスケジュールが決まったら、保育士の役割分担を決めます。
お泊まりする保育士や1日目に残業対応する保育士、2日目の早朝に出勤する保育士などを話合いましょう。
また、タイムスケジュールに沿って活動や遊びの内容を検討します。
特定の保育士に負担がかからないよう、業務量のバランスも確認しておきましょう。
おたより作成や説明会を開催する
おおまかな流れが決まったら、1ヵ月前にはおたよりを作成・配布します。
保育園によっては、お泊まり保育に向けた事前説明会を開催することも。
保護者が不安にならないよう、丁寧な対応が求められます。
おたよりには、持ち物やスケジュール、注意事項など、漏れがないよう記載します。
また、おたよりと合わせて、相談したいことを記載できるアンケートの配布をおすすめします。
アレルギーの有無や夜の過ごし方への不安など、個別の質問への対応はとても大変です。
事前アンケートを活用して、少しでも保護者の不安を取り除けると良いでしょう。
活動準備や子ども達への導入をおこなう
活動や遊びの内容が決まれば、準備に取り掛かります。
夕食を子ども達が作る場合は、そのメニューや手順などを栄養士としっかり話し合います。
また、お泊まり保育への気持ちを盛り上げるために、子ども達への導入も欠かせません。
不安を煽るような声掛けは避け、ワクワクするような導入を心がけましょう。
お泊まり保育での活動や遊びのアイデア
お泊まり保育では、1日目の夕食前や夕食後などに活動の時間を設けます。
せっかくのお泊まり保育のため、普段通りの自由遊びだけでなく、特別な活動を提供してあげたいですよね。
そこでここからは、お泊まり保育におすすめの活動や遊びのアイディアをご紹介します。
クラスみんなで楽しむゲーム
お泊まり保育での思い出をつくるためにおすすめなのが、以下のようなクラスのみんなで楽しむゲームです。・保育園内を探検するスタンプラリー
・園庭を探索する宝さがし
・園庭でドッジボール大会
・広いホールで〇✕ゲーム
・どろんこ遊び
主に、1日目の夕食前におこなうのがおすすめです。大がかりなテーマから、短時間で完結するものまで、複数準備しておくと雨の日などのイレギュラーにも対応できます。 子ども達を楽しませる出し物
子ども達を楽しませるために、保育士が主となっておこなう出し物も特別感があるのでおすすめです。・大型紙芝居や人形劇
・保育士や園長先生のダンス
・お菓子屋さんの縁日
・ビックリさせる手品
準備や練習に時間が必要ですが、どれも子ども達を楽しませられる出し物ばかりです。普段、お誕生日会などでおこなっている出し物よりも、特別感を出すのがポイントです。1日目登園後、すぐにおやつの時間を設ける場合もあるでしょう。その際は、保育士がお菓子屋さんになって、自分の好きなお菓子を選べるようにすれば大喜び間違いなしですよ。 思い出に残るクッキング
お泊まり保育といえば、夕食のクッキング体験です。しかし、食中毒や新型コロナウイルス感染症への懸念から、子ども達の夕食作りを中止している保育園も少なくありません。カレーライスなど、定番のクッキングが難しい場合は、簡単な盛り付けなどを体験させてあげましょう。・夕食のご飯をラップでおにぎりにする
・プリンに生クリームやさくらんぼを乗せる
・パンにハムやレタスをはさむ
場合によっては、食材を触ること自体が難しいという声もあるでしょう。とはいえ、自分達で食事を準備する大変さを感じたり、みんなで協力する大切さを学ぶ時間は必要です。配膳やお皿洗いだけでもさせてあげられると良いですね。 特別な夜のお楽しみ会
子ども達は、いつものお迎え時間を過ぎると少しソワソワしてきます。慣れない夜の雰囲気に不安を感じないよう、お泊まり保育だけの特別なお楽しみ会を計画してあげましょう。・キャンプファイヤー
・キャンドルサービス
・手持ち花火
・夜の園内探検
夜の園内探検や肝試しのような体験をおこなう場合は、怖がる子どもがいることを想定しておきましょう。懐中電灯を持っていたとしても、普段とは違う園舎に不安を感じてしまいます。明るいお部屋で待機する案も準備しておきたいですね。 お泊まり保育で起きやすいトラブルと注意点
お泊まり保育は、年に1度の特別な行事です。
どんなに念入りに準備したとしても、トラブルは起こります。
そこでここからは、お泊まり保育で起きやすいトラブルや注意点をご紹介します。
慣れない環境での事故やケガ
普段とは違う環境で過ごすため、子ども達は騒いで転んだり、走り回ってぶつかったりと、トラブルが絶えません。
とくに、お風呂中に溺れるなどの事故はあってはならないことです。
楽しみつつも安全管理を徹底し、事故やケガなく過ごせるようにしましょう。
子どもの精神的なストレス
「家族と離れて初めてお泊りする」という子どもも少なくありません。
あまりの寂しさに泣き出したり、なかなか眠れなかったりするなど精神的なストレスを感じることもあります。
保育士は、子ども達が安心できるような声かけや対応を心がけましょう。
保護者からの心配やクレーム
大切なわが子が初めてお泊まりするとなると、保護者も不安でいっぱいです。以下、実際に保護者から届く心配やクレームの一例です。・ひとりでお泊まりしたことがないので心配
・まだおねしょがあるけどオムツは恥ずかしい
・子どもが不安がるのでぬいぐるみを持参したい
・体調不良や薬の服用はどうすれば良いのか
・心配なので夜に様子を見に行っても良いか
・本人が嫌がっているので参加の必要性を感じない
・感染症が流行しているのになぜ開催するのか
保護者からは、さまざまな意見が届きます。年長クラスの担任や主任保育士は対応に追われることが多くなるため、保育士全体でフォローできる体制をつくりましょう。 お泊まり保育に初めて参加する保育士のよくある質問
保育士1年目、もしくは年長クラスを初めて受け持つ保育士は、お泊まり保育に不安を感じていることでしょう。
ここからは、お泊まり保育に初めて参加する保育士からの、よくある質問にお答えします。
保育士は徹夜?寝る時間はある?
保育園によって対応は異なりますが、保育士は交代で仮眠を取ります。
寝ている子ども達から目を離さないようにするため、保育士同士で夜の宴会をおこなうこともありません。
不安を抱えている子ども達は、すぐに目を覚ましたり、急に泣き出したりします。
いつでも側にいられるよう、短めの仮眠で対応すると認識しておきましょう。
保育士のお風呂はどうする?
お泊まり保育のお風呂は、近隣の銭湯を利用することもあれば、保育園のお湯でシャワーを済ますだけの場合もあります。
また、温かいタオルで体を拭いてあげるだけなど、お風呂の対応はさまざまです。
どのようなケースでも、基本的に保育士は着衣のまま対応します。
袖や裾をまくりあげて子ども達の介助をおこなうため、着替えを準備しておくと安心です。
保育士の入浴は1日我慢する、もしくはお泊まり保育開始前に済ませておくなどの対応を取りましょう。
保護者に参加させたくないと言われたら?
お泊まり保育への不安から「子どもを参加させたくない」と申し出る保護者も少なくありません。
そのような場合は、クレームにもつながるため無理強いは禁物です。
まずは、保護者や子どもの意見をしっかり聞いてあげましょう。
そのうえで、不安を感じているポイントを聞き出し、なにか保育士にできることがないか話し合いを重ねます。
お泊まり保育のねらいや、前年度の子ども達の姿などを伝えても欠席の意志が固い場合は、自由参加として柔軟に受け入れましょう。
まとめ
保育園でのお泊まり保育は、年長クラスの子ども達が家族と離れて宿泊する一大イベントです。
6~8月頃におこなわれることが多く、主に保育園内でお泊まりを楽しみます。
保育士は、子ども達が楽しく過ごせるよう入念な準備をおこないます。
お泊まり保育に対しては、子ども達はもちろん保護者も大きな不安を感じます。
各家庭が安心して参加できるよう、保護者対応にも十分な配慮が必要です。