シュタイナー教育とは、子どもの個性を尊重して、その能力を最大限に引き出す教育方法です。約100年もの歴史があり、世界各地で取り入れられています。
この記事では、シュタイナー教育の具体的な教育方法や、取り入れる際のメリット・デメリットを紹介します。また、ほかの幼児教育方法との教育思想の違いについても分かりやすく解説しますので参考にしてください。
シュタイナー教育とは?
子どもの個性を尊重する教育法「シュタイナー教育」。どのような歴史や思想を持つ教育方法なのか、その特徴を詳しく解説します。
シュタイナー教育の歴史
シュタイナー教育は、哲学博士のルドルフ・シュタイナー博士が提唱した教育方法です。1919年にドイツで誕生した「ヴァルドルフ学校」でシュタイナー教育を取り入れ、今や世界中に広がっています。
シュタイナー教育の思想
シュタイナー教育は、子ども一人ひとりの個性を尊重することを目的としています。あれこれ知識を詰め込むのではなく、豊かな心で自分の能力を発展させる人間形成をおこないます。主に、手足を動かした芸術作業が重要だと考えられています。
シュタイナー教育の特徴
シュタイナー教育の特徴は、発達段階に合わせた音楽・芸術活動です。自然のなかで子どもが自由に遊びを展開することで高い人間力を育てます。担任やクラスを変えず、常に同じ環境のなかで個性を尊重した学びを提供します。
シュタイナー教育の具体的な教育方法
シュタイナー教育では、いくつかの特徴的な教育方法があります。年齢で分ける成長周期の考え方や取り入れる活動、授業方法について分かりやすく解説します。
発達段階ごとに分ける「7年周期」
シュタイナー教育では「発達は7年周期で節目を迎える」と考えられています。発達段階を7年ごとの3つの段階に分けて、身体・心・頭をバランス良く成長させる教育方法を提案しています。
身体を育てる周期
0~7歳までの第1期は、身体を育てる周期です。遊びや運動により、しっかり身体を作ることで意志力を育てます。知識を詰め込むのではなく、自分で行動できるような厳選された環境構成を大切にしています。
心を育てる周期
8~14歳までの第2期は、心を育てる周期です。感情を揺さぶるような美しい音楽や美術に触れて、豊かな想像力や表現力を養います。豊かな感性を持つ大人になるためには、この時期の感情体験がとても大切です。
頭を育てる周期
15~21歳までの第3期は、頭を育てる周期です。「頭」とは、単に学力の高さを示すものではありません。思考力や判断力といった、自立に必要な力を身に付けます。自我が発達する時期でもあり、個人の思いを尊重する環境も求められます。
音楽を中心とした活動「オイリュトミー」
シュタイナー教育では、美しいリズムを重視したオイリュトミーを取り入れています。音楽に合わせて身体を動かすことで、自分の気持ちを表現します。
オイリュトミーは、健康な身体を作ったり、豊かな感性を育んだりするうえで大切な活動です。主に0~7歳の第1期を中心に取り組みます。
芸術を中心とした活動「フォルメン」
フォルメンとは、直線や曲線を用いた芸術活動です。そのほか、非化学模様などの線を描くことで、高い集中力や芸術的な感性を育てます。
主に心を育てる8~14歳の第2期に取り組みます。規則性のある模様を描いているうちに、数学や美術の基礎学力にもつながるようです。
クラスや担任を変えない「一貫した教育体制」
シュタイナー教育では、8~12年間の一貫教育を導入しています。その間、クラスや担任を変えないことで、子どもの成長を注意深く見守ります。
幼稚園や小学校、中学校、高校と同じ環境で学べることは、子どもの心の安定にもつながるでしょう。安心できる環境のなかで、個性を伸ばすことを目的としています。
じっくり学ぶ姿勢を大切にする「エポック授業」
一般的な小学校では、授業時間が45分と決められています。シュタイナー教育で取り入れられるエポック授業では、約100分の授業時間を設けます。
また、さまざまな教科を組み込んだ時間割は存在しません。数週間にわたり、すべての学年が同じ教科を勉強するスタイルを導入しています。集中的に取り組むことで、深い理解を促します。
シュタイナー教育のメリット
子どもの個性を大切にするシュタイナー教育には、さまざまなメリットがあります。ここからは、シュタイナー教育のメリットをご紹介します。
自然体験や芸術活動から感受性を育む
シュタイナー教育では、音楽や芸術に関する活動を重視して、学びよりも感じることを大切にします。幼いころから自然体験や芸術活動に力を入れることで、豊かな感受性を育てられます。
自由な遊びから創造性や行動力が身に付く
プラスチックで作られた流行りのおもちゃや、テレビゲームなどを避けて自然のなかで学ぶため、想像力や行動力が身に付きます。自分で判断して行動できる力は、大人になったときに大きな武器となるでしょう。
学力ではなく人間力を伸ばせる
シュタイナー教育は、なんでも先取りして学ぶ早期教育とは方向性が異なります。学力でその子どもの能力を判断しないため、子どもはのびのびと個性を発揮できます。人間力を伸ばせば、自分だけでなく相手の意見も大切にできるでしょう。
シュタイナー教育のデメリット
さまざまなメリットのあるシュタイナー教育ですが、いくつかデメリットもあります。家庭の教育方針や子どもの性格と照らし合わせてみましょう。
テストなどで学力を数値化しない
シュタイナー教育では、エポック授業を取り入れたり、学力をテストの点数で判断しなかったりと、学習に関して独自のスタイルを確立しています。そのため、学習スピードや質に差が生じる可能性があります。
日常生活でも自然を求める必要がある
シュタイナー教育の思想に沿って、日常生活の見直しが必要です。テレビを見ない、オーガニック中心の食生活を心がけるなど、さまざまな制約を受けることも。子どもだけでなく、家族全体のスタイルが変化するため負担が大きいといえるでしょう。
一貫した教育体制により価値観が狭まる
クラス編成や担任が変わらないことは、メリットでもありデメリットでもあります。常に同じ人と生活を共にすることで、価値観が狭まる恐れがあるからです。長期間にわたる一貫教育により、社会性が乏しくなる可能性があります。
モンテッソーリ教育など他の教育思想との違い
シュタイナー教育の特徴は、自然を重視した教育です。乳幼児期のうちから文字や数字を詰め込む早期教育とは異なり、自然のなかで自由に遊びながら豊かな感性を育てます。
一方、「モンテッソーリ教育」は、整えられた環境を整備します。子どもが自由に教具を選ぶことで「自己教育力」を育てます。どちらの教育思想も自由を重視していますが、子どもに与える環境構成が大きく異なります。
また、「レッジョエミリア教育」では、子どもの主体性を重視し、アートに力を入れています。シュタイナー教育と同じく芸術活動を取り入れていますが、グループでの取り組みが多く、個性についての考え方に違いがあります。
まとめ
シュタイナー教育とは、個性を大切にする教育方法です。自然との触れ合いや、芸術活動を重視して、テストの点数では量れない人間力を育みます。
世界中で注目されている教育思想で、有名人のなかでも「シュタイナー教育を受けてきた」と公言する人が少なくありません。
シュタイナー教育のほかにも、自己教育を大切にするモンテッソーリ教育や、主体性を重視するレッジョエミリア教育など、さまざまな教育法があります。子どもの性格に合った教育環境を与えてあげたいですね。