オランダが発祥の幼児教育法「ピラミッドメソッド」。
子どもが自分で選択することを重視した教育方法として、近年日本でも注目されています。
この記事では、ピラミッドメソッドの特徴やメリット・デメリットを解説します。
保育士としての具体的な関わり方や工夫も紹介しますので参考にしてください。
ピラミッドメソッドとは?
ピラミッドメソッドとは、子どもが自分で物事を選択したり、問題を解決したりする自主性を重視した教育方法です。
まずは、ピラミッドメソッドについて詳しく解説します。
ピラミッドメソッドのはじまり
ピラミッドメソッドは、オランダの幼児教育カリキュラムとしてジェフフォンカルク教育心理学博士にて開発されました。
オランダは、子どもの幸せに対する意識が高いため、この教育方法も大きく注目されています。
ピラミッドメソッドの名前の由来
ピラミッドメソッドのピラミッドは、その名のとおり四角錐のことです。
ピラミッドメソッドの幼児教育法には「子どもの自主性」「保育者の自主性」「寄り添う姿勢」「距離をとる姿勢」の、4つの基本的な理論があります。
さらに「プロジェクト」「自由な遊び」「保育士が教える遊び」という3つの実践を、ピラミッドのように積み上げていくことが大切だと名づけられたようです。
ピラミッドメソッドのプロジェクト
ピラミッドメソッドでは、基本的な理論を元に自由な遊びや保育士が提案する遊びなどの実践をおこないます。
合わせて、ひとつのテーマに沿っておこなうプロジェクトにも取り組みます。
プロジェクトとは、保育活動に「大きさ」「数」「色」「形」などのテーマを設けて、遊びを発展させる取り組みです。
長い期間をかけてじっくり取り組むことにより、興味関心を広げていくねらいが込められています。
ピラミッドメソッドの基本的な理論
ピラミッドメソッドには、4つの基本的な理論があります。
それぞれがピラミッドの基礎石となるため、どれも同じくらい大切なものです。
ここからは、それぞれの考え方について詳しく解説していきます。
【理論1】子どもの自主性
子どもの自主性とは、子どもが自ら考え決定し、行動する力のことです。
自分で選択して決断するためには、自信ややる気が必要不可欠です。
子ども達がやる気をもち、自分の能力を発揮するための環境構成が重視されています。
【理論2】保育者の自主性
子どもの自主性と関連して、保育者の自主性も大切にされています。
子どもの発達を促す活動を計画したり、ねらいを持って支援をおこなったり、保育士の視点から考えた働きかけも重要です。
【理論3】寄り添う姿勢
保育士の関わりは、子どもの情緒に大きな影響を与えます。
良好な関係が保てていれば、子どもは自信をもって物事に取り組めます。
子どもの発達に合わせ、必要なときに必要な手を差し伸べるための「寄り添う姿勢」も、基本的な理論のひとつです。
【理論4】距離をとる姿勢
子ども達の学びは、目に見えるものだけがすべてではありません。
目に見えないものに焦点を合わせて、子どもの発達を促すため「距離をとる姿勢」も大切です。
直接的に関係のない課題でも、時間をかけて学びにつながることもあるため、ディスタンシング理論も欠かせません。
ピラミッドメソッドに沿った保育士の関わり方や工夫
「自主性を大切に」「子どもに任せて距離を取る」と聞いても、慣れない間は子どもとの関わり方に戸惑いを感じるかもしれません。
ピラミッドメソッドをおこなうための資格はありませんが、教育法の基本や関わり方を知っておくことが大切です。
そこでここからは、保育士としての関わり方や工夫について詳しく解説します。
自由な遊びができる空間の環境構成
まず基本となるのが、子どもが自由に遊べる空間作りです。ピラミッドメソッドの場合は「子どもが自分で遊びを選択できる」ことを重視して環境構成をおこないます。具体的には、普段過ごしている保育室とは別に、少人数またはひとりで遊べるスペースを確保します。● 積み木スペース
● お絵描きスペース
● 絵本スペース
● ぬいぐるみスペース
目で見て何で遊ぶか分かりやすいようにするのがポイントです。遊びのコーナーを写真で撮影して、ボードにまとめておくと可視化しやすくなるでしょう。また、パーテーションで区切ることで、子ども達が落ち着いてじっくり遊び込めるようになります。保育士は介入すぎず、危険な行動がないか、片付けをしてから次の行動に移れているかなどを見守りましょう。 子どもが自由に意見を言える環境構成
子どもの自主性を大切にするピラミッドメソッドでは、自分で考えて行動する力と同時に自己表現力も育てます。
ただ考えを発表するだけでなく、保育士やお友達が円になって話し合う「サークルタイム」という場を設けます。
サークルタイムには、自分の意見を言ったり、お友達の意見を聞いたりしながら自己表現力を伸ばす目的があるようです。
また、そのやりとりから、保育士が子どもの考えや気持ちを理解できるというメリットもあります。
保育士は、子どもの日課となるよう定期的にサークルタイムを設け、子ども達が自分の意見を言いやすい雰囲気を作ってあげましょう。
個別支援ができる環境構成
ピラミッドメソッドでは、支援を必要とする子どもに対する対応として「チューターカリキュラム」という制度をおこなっています。
基本的には、コーナー遊びへの過度な介入はおこないませんが、個別支援が必要な子どもも少なくありません。
そのため、子どもの発達に合わせて、専門性の高い保育士が子どもの発達に合わせた対応をおこないます。
保育士は、自主性を育てるために任せて離れる場面と、寄り添い手を差し伸べる場面と、常に立ち位置を見極めることが大切です。
ピラミッドメソッドのメリット
ピラミッドメソッドのメリットは、子ども一人ひとりの考えや意見を大切にできることです。
自分で問題を解決したり、自信を持って意思表示をしたり、著しい成長が見込めます。
また、ピラミッドメソッドを通して保育士としての成長も期待できます。
子どもに任せる部分と支援する部分を常に考えながら保育を進めるため、保育のやりがいを感じられるといえるでしょう。
ピラミッドメソッドのデメリット
ピラミッドメソッドのデメリットは、子どもの主体性を大切にするため、幼児期から「自分で決めて当たり前」といった感覚を身に付けます。
とても良いことですが、自主性を重視するあまり、集団での活動に苦手意識を持つ可能性があります。
小学校に進学すれば協調性を求められることが多くなり、馴染みにくさを感じることも。
保育士としても、子どもとの関わり方が難しく戸惑うことが多いかもしれません。
また、日本でのピラミッドメソッドの認定園は少なく、学びたいと思ったときに通えないというデメリットがあります。
まとめ
ピラミッドメソッドとは、オランダ発祥の教育方法です。
子どもの自主性を重視しており、子どもが自信を持って物事に取り組めるよう、保育士はさまざまな環境構成をおこないます。
ピラミッドメソッドを取り入れることで、子ども達は自分の興味関心に沿って積極的に活動できるようになります。
また、関わる保育士は、子どもの様子を観察したり、関わり方を見極めたりすることで大きく成長できるといえるでしょう。