気付く・支える発達障害【後編】~保護者へ上手に伝えるためには~

早期の発見と支援が重要とされる発達障害。気になる子どもを支えるためには、その子がどこに困難を抱えているか、園での様子を見つめるとともに、保護者の理解と協力を得ることが不可欠です。しかし実際にはナイーブな問題だけに、保護者にうまく伝わらないことも多いよう…。本日は子どもの「気になる様子」をどのように保護者に伝えたら良いか、関わり方のポイントをご紹介します。
- 【前編】→ 前編の記事を読む …発達障害の特性に気付くためのポイントをご紹介します。
- 【後編】 …こどもの"気になる"行動について保護者にうまく伝えるポイントをご紹介します。
保護者の自信喪失・誤解を招く可能性も…
発達障害は、決して育て方により生じたものではありません。しかしながら誤解や周囲の理解不足などから、保護者が子どもの気になる行動を自分の責任と感じ、自信を失ってしまう、抑うつ的になってしまうといった二次障害が生じることもあります。発達支援においては子どもだけでなく、保護者の方の気持ちにも寄り添った対応が必要と言えるでしょう。
保護者が抱えがちな二次障害の例 |
◆ 周囲から非難されることで自信を喪失する |
対応は統一を!スタッフ間の情報共有が基本!
まず、気になる点は職員全員で話し合い、共通理解のもとで保護者に伝えましょう。情報共有によって、今までの事例から対応を考えることも可能なうえ、職員の認識を統一させることができ、保護者を余計に不安にさせてしまう、バラバラな対応を未然に防げます。
保護者の問題意識の有無で対応は変わる!
園での集団生活と、家庭での生活は異なるもの。子どもの抱える困難の内容によっては、家庭では気になる行動が生じない場合もあります。そのような場合には、保護者は問題意識を持っておらず、保育士の言葉を受け入れられないこともあるでしょう。ここでは、保護者の問題意識の有無による対応の違いをご紹介します。
保護者が問題意識を持っている場合
まずは、保護者が気になっている点や心配している点について詳しく聞きましょう。互いに情報交換をすることで、子どもの抱えている困難がどこにあるのかが、より明確になります。その上で苦手な部分についてどのようにサポートしていくかを、具体的に話し合っていきましょう。
◆専門機関を勧める場合は…◆
保育士さんだけでは対応が難しい場合には、自治体ごとの発達障害支援センターなどと連携することも大切ですが、「発達障害支援センターに相談してみては?」と提案するだけでは、保護者は我が子にレッテルを貼られ、突き放されたように感じてしまうでしょう。専門的な知識をもった職員が一緒に対応を考えてくれる機関もあるのだことを伝え、三者一体となって、子どもの成長を支援していく姿勢を示してあげることが大切です。
【point】
● 安易に「大丈夫」「考えすぎ」などと言わないこと
●「ADHDだろう」などと診断名を決めつけないこと
● 安易に「大丈夫」「考えすぎ」などと言わないこと
●「ADHDだろう」などと診断名を決めつけないこと
保護者が問題意識を持ってない場合/拒否をする場合
保育士さんが心配している点について、保護者が問題意識を持っていない場合、下記のようなことが考えられます。
保護者が問題意識(不安)を持たない原因として考えられること |
◆ 集団生活の中でのみ気になる行動が表れる場合 |
この場合には園での子どもの様子を丁寧に説明したうえで、保育者としては、そのことを心配していることを伝えます。こういったケースでは、気がかりなことがあると伝えられても、保護者は容易には受け入れられないでしょう。一般に、障害と向き合うには、下のような過程をたどると言われています。そのため時間がかかることを念頭に、保護者の気持ちの揺れを受け止めることも大切です。
【一般的な障害の理解の過程】
ショック → 否認 → 怒り・抑うつ → 受容 → 再起
◆具体的な支援ステップは…◆
重要なのは、まず信頼関係を構築するということ。会話の機会を多く設けたり、連絡帳を活用したりするなかで、子どものできるようになった点や、成長について情報交換を行い、相談しやすい関係性を築きましょう。保護者が気がかりな点を相談してきたときが支援のチャンスです。過去に専門機関に相談したことで、良い結果につながった例などを紹介するなど、今後の支援について、連携をとることの役割などをじっくり説明しながら、支援方法を話しあっていきましょう。
【文例】
〇〇ちゃんには、~のような優れた力もありますし、お母さんもしっかりと愛情を注いで頑張っていらっしゃるのに、〇〇な点がうまくいかないのは少し心配ですよね。子どもの成長について、専門的な知識を持った職員が相談に乗ってくれる窓口もあるんですが、一度相談してみませんか?お母さんと私たち保育士、専門職員とで、〇〇ちゃんの力をもっと伸ばしていけるように、一緒に支えていきましょう。
〇〇ちゃんには、~のような優れた力もありますし、お母さんもしっかりと愛情を注いで頑張っていらっしゃるのに、〇〇な点がうまくいかないのは少し心配ですよね。子どもの成長について、専門的な知識を持った職員が相談に乗ってくれる窓口もあるんですが、一度相談してみませんか?お母さんと私たち保育士、専門職員とで、〇〇ちゃんの力をもっと伸ばしていけるように、一緒に支えていきましょう。
気になる点を伝える前に、優れた点や成長を伝えよう!
気になる行動について伝える時には、まず苦手なことについて伝えるのではなく、その子の優れた点、できるようになったことを伝えましょう。できないことばかり伝えることは、保護者の不信感や反発を招きかねません。良い点、気になる点、双方を見てくれていることがわかれば、話を受け入れやすくなるでしょう。
子どもの目線で具体的に説明を!
「他の子とちょっと違う」「少し気になる」だけでは、保護者の方はその子がどんなことに困っているのかがわかりません。また、他の子どもと比べられたことを、心外に感じる方が多いでしょう。具体的に伝えることで、保育士さんがきちんと見ていてくれているという安心感を感じ、同時に事実とも向き合いやすくなります。
伝えるうえで盛り込むべき要素 |
◆ どういう状況で発生したか |
また、他の子どもが困った、保育士が対応に困った、という視点でなく、その子ども自身が、「~するのに困っている様子だった」と伝えることもポイント。その子のためにどうしたらよいかを、共に考えるきっかけになります。
【文例】
〇〇くんが、積み木を一生懸命積み上げていたとき、お友達がぶつかってしまい、崩れてしまったんです。〇〇くんは崩れてしまったのが悲しかったようで、大泣きしてしまい、感情が高ぶって積み木を投げつけてしまいました。
ただ、「がっかりしたんだね」と気持ちを受け止めてあげると、少し落ち着いたようでした。そのあとはお友達も誤ってくれ、一緒に積み木で遊びました。まだ感情のコントロールをすることや、気持ちを伝えることが苦手なようですが、立ち直る時間も早くなりつつあるので、寄り添っていきたいと思います。おうちでも気にかけてあげてくださいね。
〇〇くんが、積み木を一生懸命積み上げていたとき、お友達がぶつかってしまい、崩れてしまったんです。〇〇くんは崩れてしまったのが悲しかったようで、大泣きしてしまい、感情が高ぶって積み木を投げつけてしまいました。
ただ、「がっかりしたんだね」と気持ちを受け止めてあげると、少し落ち着いたようでした。そのあとはお友達も誤ってくれ、一緒に積み木で遊びました。まだ感情のコントロールをすることや、気持ちを伝えることが苦手なようですが、立ち直る時間も早くなりつつあるので、寄り添っていきたいと思います。おうちでも気にかけてあげてくださいね。
【参考】保護者の支えになった言葉&傷ついた言葉
保護者の方々が、保育士など支援者との関わりの中で言われて「支えになった」また「傷ついた」言葉とはどのようなものなのでしょうか?自治体のアンケート調査より一部ご紹介します。
◆支えになった言葉 |
□ いつでも困ったときには相談に乗りますよ |
◆傷ついた言葉 |
□ 〇〇ちゃんは(疑われる診断名)の心配がありますね |
「普通」という固定概念や、他の子どもと比べた伝え方は、保護者の方の心を傷つけてしまいます。一方で安心させる目的でも、心配をしている保護者に対して、根拠なく「大丈夫」と伝えてしまうのもNG。早期に適切なアドバイスが得られなかったという意見もありました。
保育者、保護者、そのどちらか一方の心配だけでは、支援にはつながりません。日頃から信頼関係を築き、保護者の考え方や置かれた状況に寄り添うことが、気になる子どもを支える第一歩となるでしょう。
保育者、保護者、そのどちらか一方の心配だけでは、支援にはつながりません。日頃から信頼関係を築き、保護者の考え方や置かれた状況に寄り添うことが、気になる子どもを支える第一歩となるでしょう。
編集者より
「我が子には不自由なく、健やかに成長していってほしい…」親であれば誰もが願うもの。発達に困難を抱えているかもしれないと知った時の不安やショックは計り知れません。しかし、忘れてはいけないのは、「適切な支援があれば、子どもの困難を減らし、豊かな才能を引き出せる」ということです。その理解がなければ、困難を軽減することは難しいでしょう。
発達障害をレッテルととらえるのではなく、ポテンシャルのひとつと考える、「発達障害があるからこうしてあげなくては」ではなく、子どもごとに必要な"オーダーメイドの支援"のひとつと捉える…そんな視点が保育士さんにとっても、保護者の方にとっても大切なのではないでしょうか。
※漢字表記については、厚生労働省および政府広報などに合わせて「障害」とさせていただいておりますが、「障碍」「障礙」「障がい」とも表記されます。
発達障害をレッテルととらえるのではなく、ポテンシャルのひとつと考える、「発達障害があるからこうしてあげなくては」ではなく、子どもごとに必要な"オーダーメイドの支援"のひとつと捉える…そんな視点が保育士さんにとっても、保護者の方にとっても大切なのではないでしょうか。
※漢字表記については、厚生労働省および政府広報などに合わせて「障害」とさせていただいておりますが、「障碍」「障礙」「障がい」とも表記されます。








